出版社内容情報
万物を癒す神にまつわる表題作ほか、流罪人に青天狗の仮面を届けた男が耳にした後日談、死神に魅入られた少女による七十七人殺しの顛末など。デビュー作『夜市』を彷彿とさせる傑作ブラックファンタジー!
内容説明
赤い橋の向こう、世界から見捨てられたような場所に私は迷い込んだ。そこには陰気な住人たちと、時に人を癒し、時に人を喰う顔のない神がいた。神の屍を喰った者は不死になるかわりに、もとの世界へと繋がる赤い橋が見えなくなる。誘惑に負けて屍を口にした私はこの地に囚われ、幸福な不死を生きることになるが…。現実であり異界であり、過去であり未来でもある。すべての境界を飛び越える、大人のための暗黒童話全6篇!
著者等紹介
恒川光太郎[ツネカワコウタロウ]
1973年東京都生まれ。大東文化大学卒。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞。単行本はデビュー作にして直木賞候補に。続く『雷の季節の終わりに』と『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(角川文庫版は『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補と、新作を出すごとに注目を集める。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
H!deking
103
いやー面白い。恒川さんの世界観、癖になります。くー、色々考えさせられる。おすすめ!2020/05/04
アッシュ姉
101
待ちに待った文庫化!久しぶりの恒川ワールドへの旅を存分に満喫。本を開けば、すぐさま異界へ。惹き込まれるような、引きずり込まれるような、取り込まれるような唯一無二の不思議な感覚がたまらない。怖いようでどこか懐かしく、残酷さと優しさが同居し、やるせなくて切なくて愛おしい。ブラックファンタジーも絶品だが、次はやっぱり幻想ホラーが読みたい。2020/06/29
chantal(シャンタール)
87
短編6編どれも名作!輪廻については、生まれ変われるならいいじゃないと思っていたが、仏教では六道輪廻は苦しみのうちの一つ。恒川さんの作品は何者かに囚われ、そこから抜け出せなくなる怖い話が多いが、輪廻ってこう言うことかも?と納得してしまう。確かに幸せではない。一番考えさせられたのは「死神と旅する女」。一つ間違えばテロによる言論弾圧、悪い奴なら私刑は許されるのか?と言う難しい問題を孕んでいる。それによって戦争のない世の中に出来たならば、それは喜ばしい事なのだろうか?「カイムルとラートリー」、心が温かくなる物語。2021/07/07
カフカ
84
全6篇の暗黒童話短編集。今回も恒川ワールド全開で、異世界と現実世界の狭間や不思議な世界を奇妙に描いています。私にとって恒川光太郎さんの作品はどれもツボで、これも例外なくとても面白かったです。もっとこの世界観に浸っていたくなります。特に「死神と旅する女」が心に残り、長編でも読んでみたいと思いました。「後悔や、失敗の過去であったとしても、それをなくせば今のお主は存在すらできんのだ」 心に残る言葉です。読めば読むほど恒川さんにハマっていく一方、もう少しで既刊の作品を読み尽くしてしまうという寂しさもあります🥲2021/06/12
眠る山猫屋
83
ビビッドな短編集。恒川さんらしいってどんなんだろう…そんな迷いも在りながら、心を翔ばせられた。 幽界の狭間に迷い、流罪に絶望し、多元世界を駆け抜ける。思考の牢獄からは逃げられず、友達の為に全てを賭け、友達のために尽くす。それらは人間だけの感情ではない。 総じて〝脱出〟が表面的なテーマの短編集だったかも。 『死神と旅する女』『カイムルとラートリー』辺りが好みだが『廃墟団地の風人』の恒川さんらしくないハードボイルドなラストシーン、痺れます。 2020/06/10
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