出版社内容情報
雑木林に埋められた少年の遺体からは、臓器が奪われていた。司法解剖と調査により、遺体は中国の貧困層の子供だと分かり――。孤高の刑事・犬養と相棒の高千穂明日香が、中国で急増する臓器移植の闇にメスを入れる!
内容説明
違法な臓器売買の検挙は、形を変えた殺人だ―。練馬区の公園で、少年の死体が発見された。調査の結果、少年は中国人だと判明。しかも死体からは臓器が持ち去られていた。捜査一課の犬養隼人は、後輩の高千穂明日香と共に捜査に乗り出す。少年の生家は最貧層の家庭だった。日中の養子縁組を仲介する不審な団体の存在も明らかに…。その頃、都内では相次いで第2、第3の死体が見つかる。やはり被害者たちは貧困家庭の少年で―。背後に見え隠れする巨大な陰謀。それに立ち向かう犬養たちの執念と葛藤。驚愕のラストが待つ、医療と社会の闇にも迫った警察ミステリ。
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年、岐阜県生まれ。2009年『さよならドビュッシー』で第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
461
中山 七里は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。中山七里デビュー10周年、12ヶ月連続刊行企画第5弾(現状4/12)は「刑事犬養隼人」シリーズ第5弾(既読3/5)でした。臓器売買の闇に迫る社会派医療ミステリですが、少しキレが鈍いような感じがしました。しかしクローンも造れて、iPS細胞等の技術もあるのに、未だ臓器を造れないのは、どうしてでしょうか?それであれば、倫理的な問題はあるものの、臓器移植大国中国を真似るのも一つの手ではないでしょうか。2020/06/23
ウッディ
293
公園で発見された少年の遺体は、肝臓が切除され、つたない縫合痕が残されていた。続いて起こった臓器切除殺人事件を追う犬養と高千穂は、臓器移植をいう金に群がるブローカーの存在と大学病院の関与を掴む。自分の体の一部と引き換えに金を手に入れなければならないほどの貧困とあてなく臓器ドナーを待つしかない患者がいるという現実に、闇の臓器提供が悪かと開き直られると、返す言葉がない自分がいる。ラストのどんでん返しは、命の値段そして法と倫理をを考えさせられる重い結末だった。2020/10/22
fwhd8325
245
大変面白く読みました。ストーリーはもちろんですが、このテーマ、考えさせられます。犬飼の苦悩もよくわかります。犯罪者側の事情もよくわかります。タイトルにある「傲慢」が意味するもの、それを考えると、とても苦しい気持ちになります。社会派ドラマとしてとっても思い白い。中山さんらしい作品だと思いました。2021/01/30
nobby
229
かしゃり。空虚な部屋に響く乾いた音に熱き刑事の意地を見る。一方で相手の浮かべる不満そうな表情が醸し出すのは虚しさ…それにしても、どこまで犬養は苦悶な問いを投げ掛けられるのか…今回のテーマは臓器売買。そこに各国による臓器移植の見解の違いへの問題提起や貧困問題を絡めて考えさせる正攻法の力作。貧困家庭の少年ばかりを狙うという事件そのものには嫌悪しかない。そこにまた富裕層が貧困の救済を説くことに憤り増すばかり…被害者達と同年代の娘への想い重ねる執念の捜査に胸高ぶらせながら、ラスト明かされる現実に自分も肩を震わす…2020/07/13
いつでも母さん
218
貧困・・窮すれば私の売るものは臓器しかないのかーいや、高齢故にそれもだめか。我が子の為なら違法でも買いたいと思うのか・・殺人事件の背景は臓器売買だが、そこにこの国の抱えている諸々(悲しい程の諸々)が露呈される。私ならどうしたろう?売るかもしれない?明確な答がないのが悔しい。もう、モヤモヤとどんより気分が一気に転じたラストにビックリ!あなただったかぁ。それにしてもこのテーマは難しい。人は必ず死ぬのだ。犬養刑事の苦悩は続くなぁ。2020/06/15