出版社内容情報
文政11年、筑前秋月藩の漢詩人・原古処の娘みちは、秋月黒田家の嫡子の急死の報を受け、密命を帯びて若い侍に姿を変えた。錯綜する思惑に陰謀、漢詩に隠された謎。彼女は変装術と機転を武器に、危機を切り抜ける。
内容説明
文政11年、漢詩人・原古処の娘であるみちは、若侍に姿を変えた。昨年、秋月黒田家の嫡子が急死し、福岡の黒田本家の専横に対抗できる人物を立てるべく、京、そして江戸へと向かう密命をおびたためだ。女であることをひた隠しにしながら任務に邁進するみちに、兄の友人・石上玖左衛門という心強い旅の道連れができる。だが酒を酌みかわし、心を通わせていく一方で、みちは、彼にも秘密があるのではないかと疑心暗鬼に囚われる。不気味な追っ手の影、錯綜する思惑、巨大な陰謀―聡明なみちは得意の変装術と機転で、危機を切り抜けていくが…。実在した漢詩人・原采蘋の数奇な半生と、秋月黒田家お家騒動の驚きの内幕をスリリングに描いた、圧巻の歴史ミステリー。
著者等紹介
諸田玲子[モロタレイコ]
静岡市生まれ。上智大学文学部英文科卒業。1996年『眩惑』でデビュー。2003年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、07年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、12年『四十八人目の忠臣』で歴史時代作家クラブ賞作品賞、18年『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
246
諸田 玲子、2作目です。本書は、男装の麗人歴史ミステリでした。全くの創作かと思いきや、実在の女流漢詩人・原采蘋がモデルでした。但し、流石に箱根の関所を入り女とは言え、男装で通過出来ないのではないでしょうか? https://kadobun.jp/trial/yasei/557.html2020/09/03
初美マリン
123
秋月黒田藩の内紛を漢詩人みちが髷まで結って男性としてこの難局に立ち向かう。実在の人物からの小説なのでややもするとゴタゴタした所はあったが、胸のすくような、女だてら、であった。2022/01/07
ゆみねこ
87
江戸後期の女流漢詩人原 采蘋❨みち❩は亡き父と病身の兄から秋月黒田藩のお家の一大事を救うため密命を受け、男装して江戸へと旅立つ。得体の知れない追っ手の影、兄の親友・石上玖左衛門に助けられながらの道中。最後までハラハラしながら楽しんで読了しました。若侍姿のみちがモテすぎて笑える。2020/09/20
真理そら
86
福岡藩の支藩である秋月藩の「織部崩れ」で藩の勢力図が変化し不遇の晩年を迎えた原古処の娘みちの物語だと知って、まず『秋月記(葉室麟)』を再読して予習してから読み始めた。みち=原采蘋は実在する男装の女流漢詩人で実際に各地を旅行していた。この作品では兵庫から江戸までの旅が使命を帯びたものであると仮定してサスペンスタッチで描かれている。お家騒動、淡い恋心、道中記等々の要素が入り混じって楽しく読めた。が、原采蘋像は主役として登場したわけでもない『秋月記』の方が魅力的だった気がする。 2021/02/06
雅
66
実在した男勝りの麗人をモデルに継嗣問題に揺れる御家騒動を描いた作品。使命を果たすべく策略を張り巡らせるエンタメ感と、揺れ動く人々の感情が描かれていて最初から最後まで楽しめた2020/07/20