出版社内容情報
横溝 正史[ヨコミゾ セイシ]
著・文・その他
内容説明
信濃の名士との婚礼を間近に控えた有爲子は、母の不貞の子と判明し、破談を申し渡された。衝撃を受けた父はその場で倒れ、帰らぬ人となる。真実の父親を探すため、有爲子は東京を目指すが、車中でお釜帽をかぶった、もじゃもじゃ頭とよれよれの袴姿が特徴的な男と出会う―。横溝正史唯一の家族小説は、運命に翻弄され続ける一人の女性の生涯を描いた圧巻の大河ロマン。連載完結後、約80年未刊だった幻の作品がついに文庫化!
著者等紹介
横溝正史[ヨコミゾセイシ]
1902年、神戸市に生まれる。旧制大阪薬専卒。26年、博文館に入社。「新青年」「探偵小説」の編集長を歴任し32年に退社後、文筆活動に入る。信州での療養、岡山での疎開生活を経て、戦後は探偵小説雑誌「宝石」に、『本陣殺人事件』(第1回探偵作家クラブ賞長編賞)、『獄門島』『悪魔の手毬唄』などの名作を次々と発表。76年、映画「犬神家の一族」で爆発的横溝ブームが到来。今もなお多くの読者の支持を得ている。81年、永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
104
「ビブリオ古書堂」に出ていてかなり話題になったので文庫本で出してくれたのでしょう。横溝の作品としては探偵ものではないのですが金田一の原形のような人物が出てきます。物語としては戦前の話で結婚直前であった女性の父親が不倫の相手ということで破談になってそこから本当の父親探しが始まります。新聞連載ということでこのような作品も書かれていたとは驚きでした。2022/09/01
レモン
50
ビブリアで知って気になっていた本書。推理小説ではないが、先が気になって一気に読めた。序盤から婚約破棄された有為子の波瀾万丈の物語。次から次へと苦難の連続で有為子が不憫になるが、最後は気持ち良い大団円で終わってホッとする。戦時中に新聞連載されていたらしく、世相等を反映して展開を変更されているのに違和感もなく、さすがプロと唸らせられる。梨江夫人の変貌ぶりが物凄く、本当に同一人物かと疑うほど。横溝正史ストップしていたが、やはり面白いので金田一や由利麟太郎シリーズ追いかけねば。2023/01/09
坂城 弥生
47
血みどろの殺人も、犯人探しもない、ただ懸命に生きている人達の姿がありました。2021/10/01
のびすけ
30
戦時下の地方新聞で連載され、約80年もの間埋もれたままになっていた幻の長編作品の文庫化。「横溝正史の幻の作品」という響きに胸が踊る!物語は、本当の父親を探す有爲子が遭遇する苦難の数々と、そんな有爲子の周りの人達との人間模様が描かれる。いわゆる「通俗小説」。ミステリーではない横溝作品にやや懐疑的だったが、なかなかどうして、とても面白かった!飽きさせない展開と読みやすい文章が、本編570頁というボリュームを感じさせなかった。本作品に金田一耕助の原型となる容姿を持つ主要人物が登場していることも非常に興味深い。2021/04/28
5〇5
20
あらぁ、これは一言でいうと「読む朝ドラ」ね。もとが新聞連載だったから、その1回分が3ページ程になるの。この中に波乱のエピソードが詰まってるのよ。だから中だるみがなく、次の3ページが気になっちゃう。ヒロインが「有為子」だから、放映中の「おかえりモネ」に例えると、「おかえりウイ」ってとこかしら。厳しい冬のような状況に負けず、花を咲かせる姿が重なるわねえ。2021/07/23