出版社内容情報
木下藤吉郎は、実現不可能と目されていた墨俣城築城を成し遂げ、織田家中でも一目置かれる存在となっていた。だが、藤吉郎の前に足利義昭の使者として、明智光秀が現れた。信長は、光秀を重用するようになるが……。
内容説明
敵地にある墨俣の築城に成功し、織田信長の美濃攻略に大きく貢献した木下藤吉郎。だが彼の心は、晴れやかなものではなかった。信長の妹・於市が、浅井長政に嫁ぐことになり、想いを寄せていたことを妻の於禰に知られてしまったのだ。夫婦仲は険悪になり、藤吉郎は本来の明るさを失っていく。そんななか、越前の朝倉討伐に出ていた信長に於市からの驚くべき報せが届けられる。長政が信長を裏切り、朝倉義景側についたというのだ。藤吉郎は、信長から於市のいる浅井攻めを命じられるが―。狂おしいまでに想いを寄せる女のいる城を、藤吉郎は攻めることができるのか。
著者等紹介
矢野隆[ヤノタカシ]
1976(昭和51)年、福岡県生まれ。2008(平成20)年『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。著書の他、ノベライズ作品がある。18(平成30)年福岡市文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シャコタンブルー
40
木下藤吉郎から羽柴秀吉と名前が変わるまでの一代記。数々の戦の凄まじさ、特に比叡山延暦寺の僧侶の惨殺には寒気を感じた。信長の鬼人のような恐ろしさを、これでもかというほどの迫力で描いているので、それに従う家人の脅え恐れがダイレクトに伝わってくる。藤吉郎も例外でなく、信長を恐れながらも敬う生身の人間としての苦悩、煩悶している姿に少なからず共感した。藤吉郎のイメージは明るく陽気だったが、本作は弱気で陰気な人間性も描かれ、違った一面を見ることができた。2020/04/22
keith
22
浅井長政に嫁いだお市の方への横恋慕。その浅井の裏切り。光秀へのライバル心。ねねへの思い。ちょうど今日、NHKで「秀吉」の総集編が放送されてましたが、藤吉郎から秀吉になるまでの葛藤にまみれた半生記。2020/07/12
maito/まいと
19
令和の秀吉像を作り出した矢野隆さんの傑作『大ぼら吹きの城』の続編。今作は"天下人"という目指すべき姿を見出したものの、現実や未熟な自分とのギャップに苦しむ秀吉が描かれる。初登場の光秀がとっても嫌らしく、これまでにない"将来敵"の雰囲気が漂っていた。他にも家康や浅井長政など、著名人が続々登場。秀吉の苦難は終わることはなさそう。それでも、彼を支える仲間や家族の助けを得ながら、彼はまた一歩夢へ近づいていく。「なりたい自分を諦めない」秀吉の姿は今作も読者を奮い立たせるなあ。苦しい状況だからこそ読んでおきたい一作だ2020/08/05
coldsurgeon
8
木下藤吉郎が順調に出世の階段を駆け上るかにみえるが、中間管理職としての悩みが、生まれる。自分が自分でなくなるような迷いなのかもしれない。それが恐れとなり、逃げだしたくなるのだろう。自分を捨てることにより大きく脱皮することになる人生の階段。迷いがあることに人間らしさを感じるが、使われる身から、凄みが少し顔を出し始める羽柴秀吉となるのである。面白く一気読みです。2020/05/18
四男の母
1
ちょっと弱気すぎる藤吉郎で大丈夫かなと思ったが、だんだん秀吉になっていった。2022/04/16