出版社内容情報
ホームズのもとに届いた暗号の手紙。解読するも、時同じくして、サセックス州の小村にある館の主が殺害された!事件の背後にはモリアーティ教授の影。捜査に乗り出したホームズは、過去に事件の鍵を見出す。
内容説明
ある日、ホームズのもとに届いた暗号の手紙。見事に解読した矢先、スコットランド・ヤードの警部が訪ねてきて、まさにその手紙どおり、バールストン館で資産家が惨殺されたと伝える。サセックス州に赴き、捜査に乗り出したホームズは、事件の発端は20年前にアメリカで起きたことに遡ると気づく―。奇妙な殺人事件の驚くべき真相を描く第一部と、鉱山を舞台にしたスリリングな人間劇の第二部で構成された、シリーズ最後の長編。
著者等紹介
ドイル,アーサー・コナン[ドイル,アーサーコナン] [Doyle,Arthur Conan]
1859‐1930。イギリス・スコットランドのエディンバラ生まれ。小説家。推理小説、歴史小説、SFなど、多岐にわたる作品を残す
駒月雅子[コマツキマサコ]
1962年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。翻訳家。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
186
ホームズ最後の長篇は、デビュー作『緋色の研究』と同じ二部構成。前半はスリリングな謎解き、後半は一転して西部劇さながらのハードボイルドだが、あっと驚く結末は互いに共通している。見事な二重構造で、過去も現在も何度も善悪がひっくり返る。構成だけでなく物語そのものも『緋色の研究』と似かよっており、リライトと云った趣き。より巧く描ける話を思いついた、と云うことなのかもしれない。ドイルもクリスティーも大江健三郎も、以前の小説家は思いついたら躊躇なく何遍もしつこくリライトするよね。いまの作家ももっと真似したらいいのに。2023/12/09
absinthe
165
ホームズが活躍する第一部と、第一部のある人物の前日譚を描く第二部からなる。英国風の紳士たちの謎解き譚と、ハードボイルドな米国風の荒くれものたちの物語の、対比が面白く飽きさせない。absintheは第二部の方が好きなのだが。作中、一度も登場しないのに、モリアーティの存在感が凄いこと。2022/06/06
ねむ
23
シャーロック・ホームズものをちゃんとした本の形で読んだのは実はこれが初めてだったかもしれない。第一部と第二部では舞台設定も登場人物もかなり異なり、まるで2つの別の話のよう。それが最後に繋がるのがおおー、と素直にびっくりした。ただこの事件、モリアーティが裏にいるとシャーロックが言う割には、実際裏でどう糸を引いていたのかが明言されず、どこがそんなに極悪なのかわからずもやっとしたものは残る。それも含めてミステリーなのかな。いろんな世界観が一度に楽しめ、心地よい驚きがある良作。2023/02/10
めい
14
モリアーティ教授の影がチラつきはじめる。緋色の研究と同じく2部構成で、全く違った趣でとても面白い。むしろ後半の方が読み応えあります。2021/06/30
餅屋
10
正典の第四長編▲暗号の手紙を解読する最中、サセックス州の小村にある館の主が殺害された!事件の背後にはモリアーティ教授の影…▼大戦中に書かれた第三期開始作ということで完成度が高い。前半はしっかり本格ミステリで、時系列上では初期のはずなのに、ワトソンの記憶改竄を疑いたくなるほど警察や廻りからの信頼感がメチャ高。後半はハメットの『血の収穫』を思い起させる…8年後『コンチネンタル・オプ』が書かれるわけだが、ハードボイルドの源流かもねとしても違和感なし。モリアーティ教授の影などサービス精神旺盛な傑作!(1915年)2024/08/07