内容説明
人の感情が色でわかる「共感覚」を持つという不思議な青年―藤木司を担当することになった、臨床心理士の佐久間美帆。知的障害者更生施設に入所していた司は、親しくしていた少女、彩を喪ったことで問題を起こしていた。彩は自殺ではないと主張する司に寄り添うように、美帆は友人の警察官と死の真相を調べ始める。だがやがて浮かび上がってきたのは、恐るべき真実だった…。人気を不動にする著者のすべてが詰まったデビュー作!
著者等紹介
柚月裕子[ユズキユウコ]
1968年岩手県出身。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。18年『盤上の向日葵』で「本屋大賞」2位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bunmei
229
女流作家とは思えない、事件の裏側を抉り取る展開や過激なバイオレンス描写で、息詰まるミステリーを描く、柚木作品。その原点となったデビュー作。知的障害者更生施設で起きた少女の自殺事件の謎を巡って、少女が慕っていた特殊能力を持つ司と司の臨床心理を担当した美帆が、真相に迫っていく。強引な正義感を振り翳し、突き進んでいく美帆の言動は、行き過ぎでリアルさに欠くが、その調査で見え隠れしてきたのは、権力者どもの醜い欲望の実態。しかし、そこで終わらず、更に醜悪な犯人に辿り着く展開と描写こそが、柚木作品の醍醐味なのだろう。 2021/01/12
鍵ちゃん
176
人の感情が色でわかる「共感覚亅を持つという不思議な青年、藤木司を担当する事になった、臨床心理士の佐久間美帆。知的障害者厚生施設に入所していた司は、親しくしていた少女、彩を喪ったことで問題を起こしていた。彩は自殺ではないと主張する司に寄り添うように、美帆は友人の警察官と死の真相を調べ始める。だがやがて浮かび上がってきたのは、恐るべき真実だった。最初から最後までハラハラドキドキの展開で面白かった。これがデビュー作という柚月裕子さんは恐ろしい。2020/11/16
mariya926
152
柚月裕子さんのデビュー作。読みたかったけど図書館では5年以内でないと買って貰えないので諦めていましたが、なんと角川書店で新しく発売されたので読めました!これがデビュー作なんて!!というのが読了感です。臨床心理士の美帆に関して、これは司には今は言ってはいけないんじゃない?とか、早く逃げないとと思ったことはありましたが、それでも完成度は高いです。それにしても彩は可哀想です。司と幸せになって欲しかったな。障害者施設の事件はたまにニュースになりますが、弱者に対する犯罪は明るみになるのが難しいですね。2019/12/09
TAKA
144
共感覚。特殊な能力を持つ人を題材にしたサスペンス。あまり知られてない故に特殊すぎて中々信じてくれる人はいないだろうな。障がい者に見られてもおかしくない。知的障がい者施設による裏側の暗部にメスを入れた本作。こういう施設は結構存在しているだろうな。弱者が強者には逆らえない風潮がここ数年のうちにまた元に戻ってきた感はある。これこそ忖度。高城の性癖は結構ヤバい。なりよりも主人公に好感を持てなかったなあ。柚月さんデビュー作とは思えないです。2021/06/08
タツ フカガワ
129
知的障害者施設至誠学園で16歳の水野彩が自殺、彼女の死に錯乱した同学園の藤木司が、臨床心理士佐久間美帆が受け持った患者だった。問いかけにも無反応な司の心のなかで彩の存在が大きく占めていると感じた美帆は、彩の自殺の理由を調べ始める。先読みできる筋立てはデビュー作ゆえか。それでもプロローグから一気に物語世界へと引き込まれました。司が人の声を色として感知し、その色によって言葉が嘘か真実か、または悪意かなどを判断できるという特殊能力の持ち主という設定も面白かった。2021/05/27