出版社内容情報
技術の発展は、善か悪か――。直木賞作家が放つ問題作!
内容説明
時は日露戦争前夜―明治の近代化が進む日本で、徳島の貧しき葉煙草農家に生まれた郷司音三郎。爪に火をともすような暮らしを送る一家を助けるため、池田の工場に働きに出た音三郎は、そこで電気を使用した技術に出合い、その目に見えぬ力に魅了され、仕送りするのも忘れ新製品の開発に没頭するようになった。やがて、開発の熱心さを認められ、大阪の工場に誘われた音三郎は、技術者としての大きな一歩を踏み出した!
著者等紹介
木内昇[キウチノボリ]
1967年東京生まれ。出版社勤務を経て、2004年に『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
47
明治三十年代、徳島県の貧しい農家の三男に生まれた郷司音三郎は働きに出た葉煙草工場で、電気を動力とした機械が煙草の葉を細かく刻むところを見て衝撃を受ける。以来、電気に魅せられた音三郎は、無学ながら技術者としての道を目指す。前半は『櫛挽道守』に通じる家族のしがらみに悩み、やがて大坂に渡って技師としての途に就くと無線機の開発に取り組む。ノンフィクションかと思うほど生々しい木内さんの描写に圧倒されながら下巻へ。2021/08/06
優希
38
面白かったです。貧しい生活を助けるため工場に働きに出た音三郎。そこで「電気」という技術に出会い魅了されていく音三郎の純粋さに惹かれました。仕送りも忘れて開発に没頭するのはどうかと思いましたが。それだけ純粋だということですね。熱心さから技術者の道を歩み始めた音三郎。下巻も読みます。2025/04/10
piro
38
木内さんが描く市井の人の物語は、ありのままの人の姿を映し出す様で、フィクションながら人の息遣いがリアルに感じられます。明治から大正の世、山深い徳島池田村に生まれ、貧しい生活を送る音三郎が、機械の面白さ、電気の将来性に惹かれ、技師として成長していく物語。派手さはなくても、時代の変化の様子や新技術に必死に取り組む音三郎の姿が興味深く退屈しません。音三郎の周囲の人々も個性的で面白い。物事に集中するあまり周りが見えなくなりがちな音三郎がやや心配ですが、下巻の展開が楽しみです。2024/04/17
エドワード
31
明治から大正に移る時代。徳島の煙草農家に生まれた音三郎が、持ち前の好奇心で日本の産業革命の一翼を担う大河ドラマだ。目に見えない<電気>というものに、途方もない可能性を感じる音三郎。徳島の煙草工場から大阪へ渡り、家族経営の小宮山製造所で職工として働く。工場の面々、社長の小宮山、妻のお杵、研輔、信次朗、錫を求めて訪れた写真館の娘・おタツらの人間模様、好景気を背景に、日本の工業と資本主義が成熟していく様子が生き生きと描かれる。そして音三郎は無線電信機と出会い、大都伸銅へ転職して無線の開発に努める。下巻へ続く。2019/10/05
007 kazu
28
時代は明治から大正、徳島のタバコ農家に育つ4人兄妹の三男として育つ、音三郎。機会に魅せられた少年は家族から 経済的支援も期待されながら大阪の工場に雇われ、電気と出会い、その研究に没頭し更に大きな企業の技師となる。 同僚やおタツという女性の出会い。叔母からお金をせびられる地方の貧困。技術に魅入られる中で、純朴だった少年は人の心を後半で失いつつある。 上巻だけでも濃密すぎて目まぐるしく変わっていく男の半生。読み応えがありすぎる。2024/07/27
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