出版社内容情報
韓国で起きた大型フェリー沈没事故と、別の事故で溺死しips細胞で再生された少女。ふたつの事象をつなぐ真実と、闇に隠された国家陰謀とは。圧倒的スケールで描く、衝撃のサスペンス巨編。
内容説明
韓国沖合で大型旅客フェリー世月号が沈没、多くの犠牲者が出た。船会社のオーナーは事故直後から姿を消し、その杜撰な管理体制が次々と明らかになっていく。同じ頃、韓国で細胞工学の治療院を経営する津村のもとに、溺死して冷凍保存された少女の遺体が運ばれた。津村はiPS細胞と3Dプリンターを駆使して少女のレプリカを作ることに成功。彼女は記憶を呼び覚ましながら、自分が世月号に乗船していた事実を知るが―。
著者等紹介
帚木蓬生[ハハキギホウセイ]
1947年、福岡県生まれ。東京大学仏文科卒業後、TBS勤務。その後、九州大学医学部を卒業し、現在は精神科医を務めながら執筆を続ける。93年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、95年『閉鎖病棟』で吉川英治文学新人賞、95年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、97年『逃亡』で柴田錬三郎賞、2010年『水神』で新田次郎文学賞、11年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』『蛍の航跡 軍医たちの黙示録』の2部作で日本医療小説大賞、13年『日御子』で歴史時代作家クラブ賞作品賞、18年『守教』で吉川英治文学賞をそれぞれ受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のぶ
78
本作は2014年に韓国で起きた、セウォル号の沈没事故を中心に描いた作品。当時の杜撰な運行状況が詳細に表されていて、思わず引き込まれた。あの悲劇が人災だったことがよく分かる。ただ、それだけではノンフィクションノベルに終わってしまうところだが、帚木さんはそれにiPS細胞に3Dプリンターを利用した人間のレプリカを、作成する物語を絡めている。こちらはSF的な印象が払拭できないが、帚木さんが医師なので、現実なのかもしれない。どちらの話も興味深く読んだが、双方をマッチングさせるには、やや無理があるとも感じられた。2019/04/23
カブ
37
IPS細胞と3Dプリンターで人のレプリカを作るなんてSFのような始まりですが、物語は実際に韓国で起きたフェリー沈没事故とからめてのサスペンスのような展開になっています。人のレプリカのくだりは、想像の世界というより、もしかしたら現実になりそうな気がして怖さすら感じた。2020/03/23
James Hayashi
31
14年に起きた韓国セウォル号沈没事件をモチーフにし、iPS細胞で生き返った女性を交えた作品。「悲素」で味わえた事件の真髄を描き出す作風は秀逸である。セウォル号がいかに汚辱にまみれていたのか理解できる。軍、宗教団体、政界との癒着、賄賂。それ故、利益重視で仕込まれた改造、見逃された過積載、不十分な救護の海洋警察、責任放棄で不馴れな船長と乗組員。明らかな人災である。また船会社オーナーは巨額な資金を持ち、事件後失踪、自殺遺体発見に至る(本人であるか怪しい)。転じて医療関連の話しは再生医療の可能性に触れるが、→2020/05/26
Nao Ko
9
久々の帚木さん、「水神」とか「逃亡」とか凄く面白くて大好きなんですが…う~ん。いまいちでした。なかなか進まず、退屈なシーンも最後まで読めばきっと何かしらの意味があるはずと思い読み進めましたが…IPS細胞での蘇りは興味深かったけど、世月号の真相もはっきりしないままで…ふたつをつなぐ真実なんて、読まなくてもわかっちゃったし~春花の日常とおじいちゃんとの旅行シーンばかりで退屈でした。唯一心に残ったのはモンドールチーズ、食べてみたいわ♪2019/04/28
matsu
8
帚木蓬生氏は2作目の俺だ。出だしはSF。あとは、17歳の少女の日常。祖父と掛かり付け医療チームの面々との日常。優しい人々と美しい自然に囲まれた素晴らしい日常。でもこれって、きっと悲しい話なんだろうな、と思いながら読んでいた俺だが、やっぱり悲しい話。予想とは少し違っていたのだけれど。持って行き先の無い悲しさと怒りの入り混じった読後をどう治めればいいのか。無理だ。治まらない。治まらない読後を共有すべく、多くの貴兄貴女にも是非読んで欲しいと、切々と思う俺であるのだ。前日譚があるようだ。読んでみたい俺だ。2020/02/25
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