出版社内容情報
息子を殺したのは、「私」ですか?
内容説明
静岡在住、専業主婦の石橋あすみ。神奈川在住、フリーライターの石橋留美子。大阪在住、シングルマザーの石橋加奈。小学3年生の「石橋ユウ」を育てるそれぞれの母親たちは、慎ましくも幸せな家庭を築いていたが、些細なことをきっかけに、その生活は崩れ始める。そんなある日、「イシバシユウ」虐待死のニュースが報道され―。ユウを殺したのは、私ですか?どこにでもある家庭の光と闇を描く衝撃作。
著者等紹介
椰月美智子[ヤズキミチコ]
1970年神奈川県生まれ。2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で第3回神奈川本大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NADIA
82
椰月さん4冊目。心安らぐ物語ばかりだったので、この作品もそのような雰囲気を期待していたのだが、1P目から裏切られた(^^; ユウという名前の9歳の少年がひどい虐待を受けている場面。そして、9歳の「ユウ」という3人の少年の母親たちが交互に語り手となって物語は進む。冒頭の虐待を受ける「ユウ」はこの中の誰なのか?それなりに幸せそうな家庭が壊れていく様はとてもつらい。彼女たちが家族に抱く不満・憎しみがとてもリアルだ。彼女たちの我慢が限界を超えた瞬間、私も子供に掴み掛る自分を見た思いがした。子供いないけど。2020/02/10
もぐたん
78
ものすごい共感とともに読み終えた。物語の中に、私が、夫が、息子がいた。日々の小さな苛立ちやため息を言葉にしてくれることで気持ちが整理されるし、自分を認められたようでホッとする。貧しいながらも、まっとうに生きようとする石橋親子には胸打たれるし、夫より稼ぎながら家事に子育てに夫の世話に懸命な留美子には自分を重ねる。そんな中、あすみは一番遠い所にいたけれど、世の中のありふれた家庭の一つなんだろう。それにしても、それぞれの夫の、父親としての有害さがリアルで悲しくなる。親として、夫婦共に成長したいものだ。★★★★☆2021/05/27
バネ
70
この作品を自らの日常と照らし合わせると痛い程に、嫁の、母親であるコトのしんどさ、ソコからどうしても発生してしまう子供へのイラつき、行き場のない怒りが、避けられないものであるコトを実感出来る。そして、嫁が常にイライラしているコトを、夫である父親が本当の意味で理解出来ないのも、解る気がする。だからこそ、そんな嫁の状況を少しでも理解して受け入れるコト、せめて子供には無条件に優しく接していくコトが、父親の勤めなのかと。コレ読んで簡単に「イライラしなさんな」なんて言えなくなった。色々な「気づき」を得るコトが出来た。2019/03/19
kei302
57
これは、どの“イシバシ ユウ”のことなのかと不安でページを繰る手が止まらない。途中で気づく。どの家族にも当てはまる、一歩間違えれば起こりうることなのだと。加奈と勇と児相の相良さんとの会話に、『ええ話や・・』と思っていたら、文庫解説:上野千鶴子氏にばっさり切り捨てられた。 圧巻の母親論。ここに視点を当てるのか! と、目が覚める思いがした。本編を読んだ感動を吹き飛ばされた。辛辣で、清々しいしい。「世の中の夫や父親に対する警告の物語」椰月さんのコメントが厳しく響いてくる。2020/06/17
さおり
53
別々の場所で、別々のイシバシユウを育てる3人の母親。それぞれに、それぞれの事情で追い詰められていく。そこに、小学3年生のイシバシユウが母親に殺されたニュース。事件を起こしたのは、どの母親か。もうねー、先が気になってどんどん読んじゃったよ。気になるって言うかね、心配で。母も子も。私は子育てをしたことがないくせに、けっこうな数の親子の相談にのっています。子育てをしない人生になると思ってなくてこの職を選んだから仕方ないんだけど、なんかごめん、って思っています、日々。楽をしてごめん、って。2019/11/22