出版社内容情報
国民国家の「エラー」にされた人々。彼らから見た、移民大国・日本と世界!
内容説明
日本で生まれ育ったにもかかわらず無国籍者となった女子大生。中国の軍閥高官の孫だったにもかかわらず魔都の住人を選んだ男。移民、難民、無国籍者に、暮らしていた国が滅びた遺民、そして国家から切り捨てられた棄民。国民国家の「エラー」にされた人々の実態とは?彼らの眼に移民大国・日本はどのように映っているのか?日本、中国、台湾、新彊ウイグル自治区までもめぐり、「境界の民」に迫った傑作ルポ!!
目次
第1章 クラスメイトは難民―日本のなかのベトナム
第2章 偽りのシルクロード(上)―迷走するウイグル
第3章 偽りのシルクロード(下)―道具としてのウイグル
第4章 ガラパゴスのコスモポリタン―引き裂かれる上海
第5章 黒いワイルド・スワン―軍閥、文革、歌舞伎町
第6章 甘すぎる毒の島―幻想としての台湾
著者等紹介
安田峰俊[ヤスダミネトシ]
1982年滋賀県生まれ。ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。立命館大学文学部(東洋史学専攻)卒業後、広島大学大学院文学研究科修士課程修了。在学中、中国広東省の深〓大学に交換留学。一般企業勤務を経た後、著述業に。アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情について執筆を行っている。2018年『八九六四「天安門事件」は再び起きるか』で第5回城山三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
85
ベトナム難民、台湾、ウイグル。国境をこえて生きてきた多くのアジア系の人達の人生と本音。外国人労働者や移民に関するニュースが気になり、積読山から手にとったのだけど、自分が「かわいそう」とかでスルーしてきたことを突き付けられたような。初出の2015年から状況は非常に厳しくなっているのは確か。抑圧を強める中国にどう対峙していくのか。続く憎しみの連鎖。反中国の材料として彼らを利用するのは論外だが、人として見ていないという点では、技能実習生問題も根っこは同じかも。扱いの難しい主題。著者は「今」をどう描いているのか。2023/04/29
piro
25
国と国の「境界」に生きる人々のルポ。日本で生活するインドシナ難民の二世、中国の中でアイデンティティを否定されるウイグル人、国際的に国として認められていない場合が大多数の台湾人…。こういった人々に対する多くの日本人の認識が凝り固まったものだと言う事がわかります。固定観念や偏見、蔑みを捨て、今・実の彼らを理解し、尊重していく事が重要ですね。それにしてもウイグル問題がどんどん救いようが無くなっているのが辛いです。タイトルと内容はイマイチ合っていない様に感じました(単行本のタイトルの方がまだ良かったのでは?)。2020/04/12
こも 零細企業営業
21
日本に亡命して来たベトナム人とその子供達、中国で弾圧されているウイグルの人達と日本人の関係、かつて日本が占領していた上海、その後の歴史に翻弄された人の話、台湾のヒマワリ運動と日本人の台湾利用。それらを現地の人を取材して裏取りをして行ったルポ。特にベトナム、ウイグルについては無知だったと痛感、あと台湾の人達が日本の統治は侵略で悪いことだと言っていた事にホッとした。2020/02/24
lily
13
ベトナム難民二世やウイグル人など、国家のスキマに置かれた人々を取材した重厚なルポルタージュ。著者の一貫した取材姿勢は「取材者の今を脚色なく伝える」こと。ベトナム難民はかわいそう、台湾は親日の有効国家…紋切型のレッテルを貼ることで満足する感覚は危うい。特にメディア(国民の望むものを提供する姿勢)への警鐘は森達也を彷彿とさせる切れ味。リテラシーこそ人間力だとする著者は中国関係で今最も信頼できるノンフィクションライターである。しかし、チベットへの当局の弾圧はえぐすぎる…。弾圧が原理主義を生むという流れには納得。2021/05/21
のれん
13
日本は千年以上前から住んでる島民に「日本民族」っていう名を付けただけだから違和感はない。 だからその普通がない人を可哀想だとか言い出す。国を故郷と言えない悩みだけを切り取る行為は、固有のアイデンティティを守るためなのかもしれないと読みながら思った。 国民国家と民族文化は違う。当たり前だけど混同してしまう人は多くいて、国家への賛否で敵味方を考えてしまう。 国家は国土に由来し、土地で敵味方を区別するのは中世の考えから地続きである。 故郷を文化そのものだと言える日があればと思うが、人間見えないもの頼りが難しい。2020/07/25