出版社内容情報
東田 直樹[ヒガシダ ナオキ]
著・文・その他
内容説明
「僕は、二十二歳の自閉症者です。僕の口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとです。普段しているこだわり行動や跳びはねる姿からは、僕がこんな文章を書くとは、誰にも想像できないでしょう」。会話ができない著者の「考える歓び」に満ちた清冽なエッセイ。自分にとっての障害、人との絆、自然との一体感、かけがえのない幸福。生きることの本質を捉えて多くの驚嘆と感動を呼んだベストセラー、待望の文庫化。
目次
第1章 僕と自閉症(僕と自閉症;刺すような視線 ほか)
第2章 感覚と世界(笑顔;乗り物 ほか)
第3章 他者とともに(悪い人間;涙 ほか)
第4章 考える歓び(罰;心配性 ほか)
第5章 今を生きる(人生;苦しみ ほか)
著者等紹介
東田直樹[ヒガシダナオキ]
1992年8月千葉県生まれ。会話のできない重度の自閉症でありながら、パソコンおよび文字盤ポインティングによりコミュニケーションが可能。13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫)で、理解されにくかった自閉症者の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びる。同作は国際的作家デイヴィッド・ミッチェルにより翻訳され、2013年に『The Reason I Jump』が刊行。現在30か国以上で翻訳、世界的ベストセラーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MI
80
自閉症である筆者のエッセイ。会話ができないけど、自分の世界を文字にすることで少しでも自閉症の理解をしてくれる人が増え、生きやすい世の中になったらと書いた本。この方は絵本も出してる。自閉症のことをこれを読むまで誤解してた部分があった。 必然と偶然という項目で自分が自閉症で辛いこともおおかったけど、これを必然と捉えればもっと幸せになれるわけじゃない。けど偶然と捉えることで自分なりに納得している。必然も偶然も人の力ではどうにもならないけど捉え方しだいで良い方向に考えることができるという言葉が印象に残った。2022/09/18
かっぱ
45
世界的ベストセラーとなった「自閉症の僕が跳びはねる理由」をまだ読んでいないですが、まずはこちらを。自閉症の人の心の中で起こっていることがよく分かる。宗教学者のような言葉もたくさん。自然が好きな東田さん。現代人が忘れてしまった古代の人のものの見方(ご自身でもそう言われている)が、心に響く。そして、その考え方は、未来の人の価値観だとも言われている。2022/07/03
mincharos
42
丸山さんの「ワンダフル・ライフ」にもあったけど、障がい者=知的障害ありというわけではない。東田さんの場合は自閉症で、知的な文章のエッセイの途中にインタビュー記事が挟まれ、突如関係ない(ように思われる)言葉を繰り返したり、急に立ち上がりウロウロしたりする様子で、そういう行為に免疫がない私たちは驚いてしまうんだけど、そんな行動にもちゃんと理由がある。私は人間であることにこだわり過ぎているのかもしれない。もっとちゃんと自然の一部であることを意識し、植物や風や空と一体化するような感覚を研ぎ澄まさなければと思った。2021/08/30
booklight
39
自閉症の著者のエッセイとインタビュー。丁寧に感じたことや思考を重ねているエッセイがよかった。インタビューでは会話はできずに文字盤を指さし、突然立ち上がって窓際に行ってしまう様子も含めて書かれている。どうしようもない思考の執着や感情の起伏が平明な文章で書かれていると、そういったことで普通の生活が送れない悲しさが伝わってくる。ずっと青空を見ていたり、水の流れやタイヤの回転を見ている様子は、内面世界が豊かなのだろう。海外でも講演を行い聴衆について「どの国でも家族を思う気持ちは同じ」という言葉に胸を打たれる。2020/02/09
やまはるか
26
「自閉症の僕が跳びはねる理由」の東田直樹氏のエッセイ。己の中に共通点を探ることで、自己分析になるだろうとの思いで読んだ。近年とみに過去の厭な体験を思い出して独り言をつぶやくようなところは、何かをリアルに思い出して奇声を発する彼の行動と似ている。生活時間の中で現の密度が低下して過去が足跡のようにして姿を現す。若い頃には予想もしていなかった内的現象だ。安直に閉じこもらず、外への関心と関わりを広げて現の密度を高めるような生き方をしなければならないと自覚した。2023/09/10