出版社内容情報
京都の千本通りの側にある豪邸は、資産家の夫が愛妻のために建てたものだ。ある夜、行き倒れの男がやってきて、すべては狂いだす――。闇に蠢く影は、異形の者か人が生み出したものか。人間の本質を抉りだす恐怖譚。
内容説明
実業家が若き愛妻のために建てた邸宅。幸せの象徴のようなその家に、美男と地味な女といういびつな夫婦がやってきたことから、すべてが歪みはじめる。(「桜鬼」)。少年が決して近寄ってはならないと言われていた、禁断の部屋。そこでは、父と友人たちによる忌まわしい“遊戯”が行われていた…。(「鬼の子」)。夫により女として開花してゆく新妻。幸せの中、吹き抜けの玄関ホールにぶらさがって揺れている不気味な人形を見てしまう。(「鬼人形」)。闇に蠢く影は異形のものか人間が生み出したものか―。6つの恐怖譚。
著者等紹介
花房観音[ハナブサカンノン]
2010年「花祀り」で、第1回団鬼六賞大賞を受賞し、デビューする。バスガイドを務めながら小説を執筆している。女性の官能と繊細な心の動きを丁寧にすくいあげた作品は、世代を超えて読む者を魅了する。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
148
花房観音は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。大きな櫻の樹の下の鬼の棲まう西洋館の物語。性と死と呪いの連作短編集です。著者のエロホラパワー炸裂!!!作中にも出て来ますが、梶井基次郎の『櫻の樹の下には』(屍体が埋まつてゐる!)を想い出しました。櫻は人の生血を吸って、綺麗な花を咲かせるのでしょうか?【読メエロ部】2017/10/29
じいじ
111
人(とりわけ女性)の心の中で、恐ろしい感情は「嫌い」ではなく「寂しい」だそうだ。嫌いは一時的だが、寂しいは重なると「憎い」に変わるかららしい。そんな寂しい女たちを、京都の大邸宅を舞台に描いた六話の連作。女の感情の変わりようが面白く描かれています。鬼が棲みついた怖い話ですが、可笑しくて笑っちゃう場面も…。花房さんの今作の「毒」は、いつもよりさらっと軽めですが、ストーリーの面白さは流石です、飽きさせません。東男は京女に弱いです。京女の京都ことばの甘さに翻弄されてしまいました。【図書館本】2018/01/19
ちょろこ
74
寂しさには要注意、の一冊。初読み作家さん、読みやすかった。特に語り口調の章はしっとりとした美しさを感じた。知らず知らずのうちに胸の奥底から湧き上がるような寂しさ。そしてその寂しさが生み出すものとは…。たしかに寂しさを感じると負の感情を生み出す気がするから要注意だ。そして幸せだと感じていても実は寂しさをしまいこんでいるのかもしれない。「寂しい女は寂しいままや。」この一文が印象的。それにしても桜と妖しさはぴったり、最強の組み合わせだ。2018/02/07
うどん
52
花房観音さん、エロ少なめで…。でもゾッとしました。面白かった。2018/01/16
momi
50
かつて千本の桜が植えられていたという千本通…そこに愛する妻のため、窓から満開の桜が見えるように大きな屋敷を建てた主人。あれから様々な人がこの屋敷の主人になり時が流れていくが…。あの桜だけは昔のまま…。この作品は…寂しさが始終まとわりついてくる感じがしてきます。寂しさを喰らう魔物に足をすくわれてはいけません!寂しさから心の隙間に鬼を入り込ませてもいけません!!怖い…ホント人間ほど怖いものはないです!!寂しい…と囁き声が聞こえてきそうでゾッとしながら、この世界観にのめり込んでいきました!!面白かったです!!2017/10/26
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