出版社内容情報
「アゲ」と「気合」の行動主義=反知性主義、家族主義で母性的。これまで論じられなかった日本の「ヤンキー」性と、急速に拡大するバッドセンス。日本文化の深層に、気鋭の精神科医/評論家が肉薄する!
内容説明
EXILE、金八先生、相田みつを、ジャニーズ、橋下徹、白洲次郎―。大衆受けする人物に共通する要素、それはヤンキー的であることだ。たとえば「気合」や「絆」を良しとしてしまう感性。「考えるより、感じろ」という感性的行動主義。「何をなしたか」より「どう生きたか」に惹かれる習性。日本人の心性に深く根付いた「ヤンキー的なるもの」の精神構造に、気鋭の精神科医にして評論家が肉薄する。第11回角川財団学芸賞受賞作。
目次
なぜ「ヤンキー」か
アゲと気合
シャレとマジのリアリズム
相田みつをとジャニヲタ
バッドテイストと白洲次郎
女性性と母なるアメリカ
ヤンキー先生と「逃げない夢」
「金八」問題とひきこもり支援
野郎どもは母性に帰る
土下座とポエム
特攻服と古事記
著者等紹介
斎藤環[サイトウタマキ]
1961年生まれ。岩手県出身。筑波大学医学研究科博士課程修了。医学博士。爽風会佐々木病院・診療部長を経て、筑波大学社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」問題の治療・支援ならびに啓蒙。漫画・映画・サブカルチャー全般に通じ、新書から本格的な文芸・美術評論まで幅広く執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
117
序盤がほとんどヤンキー文化の紹介羅列に近く、興味なかったり嫌悪するものが多いわで、一時はこの本を買ったことすら後悔した。しかし中盤から論旨が展開しだして面白く読める。精神科医ならではの分析もあっていろいろ考えさせられた。んで結局、思ったのは大方の日本人の心にヤンキーはいるんだろうけど私の中にはいないんだってこと。特に反知性主義は、どうあっても耐えられない世界にしか見えない。だからヤンキー文化に冷淡であったり嫌悪を持ってしまうのか。まあ、外敵とみなされたら容赦ないのがヤンキーなのでほどほどに距離とります。2015/08/17
マエダ
70
「ヤンキー文化」=「女性原理のもとで追求される男性性」と「おたく文化」=「男性原理のもとで追求される女性性」この二つのアイディアは興味深い。ヤンキーではないがヤンキー性を武器に活躍する俳優の例は面白い。2019/02/04
harass
59
この本を踏まえての対談集『ヤンキー化する日本』の序章が非常に面白く、また序章は説明不足のところがあり圧縮前の本論であるこの本を手に取る。著者は日本文化社会のある種の美意識の集まりをまとめたものに『ヤンキー』とタグを付ける。実際のヤンキーのことではなく、ヤンキー的なもの論じていく。それは日本大衆の根底だ。芸能人や文化や漫画などなど。個人的に無縁と思っていたが、読んでいくうちに自分も感覚?共通意識に同じ部分があることに気がつき慄然とする。日本文化論の傑作。読み物として非常に楽しめた。ぜひおすすめ。2016/07/17
ヒロミ
54
タイトルが素敵。秀逸なヤンキー論。ヤンキーそのものではなく日本人の中に潜む、いわば「ヤンキー魂(ソウル)」について相田みつを、ジャニーズ、漫画、金八先生、母性、古事記(!)と様々な視点から考察。結論を先送りする文章には少しイライラさせられたが、なるほどたしかに日本的なるものとヤンキーテイストは馴染みがいいんだよなあと妙に納得させられた。著者考案の「本宮ひろ志テスト」(本宮ひろ志のキャラの横に本宮ひろ志絵でその人物を描きこんだと想定して違和感がなければヤンキー認定)には笑った。面白い本でした。2016/06/09
ヨーイチ
40
「ヤンキー」って言葉を結構目にする。所謂「不良」文化って大人になると関係無くなる物だと思うが、どうやらそんなに単純なものでも無いらしい。興味を持ったきっかけは「ヨサコイソーラン祭り」。あの踊りと扮装が揃いも揃って「不良っぽい」ってのはどうしてなのだろう。オマケにそれが似合っていて格好良い、というか日本産の若い衆に似合っている、というべきか。出演している子達が皆「その手の趣味」を持っているわけでは無いだろうし、自然発生的に生まれている筈の物がある種のスタイルを持っているってのが面白い。続く2016/04/19