出版社内容情報
空港近くのホテル。人々の笑い声は、包丁を持った元ハウスキーパーの青年、香取純一の侵入で悲鳴に変わる。彼を凶行に駆り立てたものとは? 痛切な回想と現在の悪夢に圧倒される、怒濤のホラーサスペンス!
内容説明
数本の包丁を携えたハウスキーパーの香取純一は、空港近くのホテルで人生を振り返る。最愛の母との貧しい暮らし、漫画家という夢、初恋相手の風俗嬢…幸せな思い出もあったが、終いにはいつも裏切られた。それらのダメージは水のように滴り続け、あることをきっかけに、ついに香取の心から溢れ出した。彼が静かに最初の客室のドアを開ける時、惨劇が始まる。痛切な回想と現在の悪夢に圧倒される、怒涛のホラー・サスペンス。
著者等紹介
大石圭[オオイシケイ]
1961年、東京生まれ。法政大学文学部卒。93年、『履き忘れたもう片方の靴』で第30回文藝賞佳作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
煮詰まったマザコン青年が次々に大量殺人を犯す話。ただそれ以上でもそれ以下でもないような…。ストーリーはそのままだけど、最近の不穏な事件、秋葉原通り魔殺人を始めとする様々な理由なき事件を思い浮かべてみると戦慄を覚えずにはいられない部分もあり。あと著者独特の淡々とした文体もそれに輪をかけているような。ただ水が溜まっていくように不満もまた溜まっていくと言いたのだろうけど、これは「フォーリングダウン」とか数多の名作があるのに比して、思いっきり身勝手な理由故なかなか感じずらい。あえて身勝手にしたのかも知れないけど。2020/04/06
Yu。
26
今ある立ち位置は、生まれ育った環境で大きく左右するというのは頷ける‥ でもそれだけでは割り切れない人ならではの複雑さを痛感します。2020/05/09
そのぼん
21
何故こうなった…。とある青年が元勤務先であるホテルの客室に侵入し、利用客をひたすら殺害していくお話でした。主人公の青年が気持ち悪く、全く共感出来ない人物でした。ホラーサスペンスの主人公に共感できてもそれはそれで怖いですが、『ストレスとのつきあい方、もうちょっとうまく出来ないのか』と突っ込まざるを得ませんでした。2020/05/05
マサキ@灯れ松明の火
14
…?…?…?…漫画家志望の香取純一は、ハウスキーパーとして働いていた。たった1人の肉親である母は、金持ちの男と再婚して、彼を捨てた…?描く漫画は、全てボツ…?編集者の見る目がない…?…幸福な奴らが、自分の幸福を奪った…?…結果…自らの作品そのままに…ホテルの宿泊客を殺害しまくる…?いわゆる…「極度のマザコン&被害妄想男」の一人芝居…犠牲者の方々のご冥福をお祈り致します………2016/07/09
綾乃
11
空港近くのホテルでハウスキーパーとして務める香取純一は、自分の幸せは他人に搾取されていると思い込み、水のように滴り続けた澱のようなものが、あることをきっかけに溢れ出し、自身が務めるホテルで淡々と無差別大量殺人を犯しながら過去を振り返るサイコホラー。 母親への異常な執着、自己擁護ばかりが目につき、初期の大石作品で殺人を犯す人物の中にあったその人なりの定理が、今回の純一には一切感じられず同情の余地はなかったうえに、鬱屈を溜め込んだ末に誰しもが、純一になり得ると思わされたことが嫌になる_ノ乙(、ン、)_2021/04/08