出版社内容情報
自ら選んだ人生の結末が目の前に迫ったとき、忘れかけていた生の実感と死の恐怖が、人々を襲う。〈生存制限法〉により、百年目の死に向き合うことになった日本人の選択と覚悟の結末は――!?
内容説明
不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―円滑な世代交代を目論んだ「百年法」を拒否する者が続出。「死の強制」から逃れる者や、不老化処置をあえて受けず、人間らしく人生を全うする人々は、独自のコミュニティを形成し活路を見いだす。しかし、それを焼き払うかのように、政府の追っ手が非情に迫る…世間が救世主を求める中、少しずつ歪み出す世界に、国民が下した日本の未来は!?驚愕の結末!
著者等紹介
山田宗樹[ヤマダムネキ]
1965年愛知県生まれ。98年に『直線の死角』で、第18回横溝正史賞を受賞。2003年に発表した『嫌われ松子の一生』は、映画、テレビと映像化され、大ヒット作となる。2013年、本作で第66回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソルティ
394
心の底からおもしろいと思えた。久しぶりにそんな作品に会った。悪役は愚かだが、大概の人がいい人。変わったと思われた牛島大統領と遊佐首相も志は同じで嬉しかった。ほぼ全ての出来事が解決・解説され悪は成敗されるしでスッキリ感。そしてやっぱり「死を排除しても違った形で死に向かう。自然の摂理に抗うな」という強いメッセージを感じた。不老化処置を受けた人が奇病を発症したのはそういうことだ。「「僕だって、百年法に賛成しているわけじゃない。でも、百年法をなくすだけでは、なにも解決しない。もっと大きな問題が生まれるだけです」」2021/01/10
青乃108号
261
これは風呂敷を広げすぎて、結局は纏まらないパターンじゃなかろうか、と読みながら何度も不安になる。きっと最後はこうなるよね、と、いつもの癖で悪い方へ悪い方へと予測する。100年法などと突拍子もない事を持ち出して、あれやらこれやら起きて気を揉ませるが。結局は。結末はともかくとして、長い物語だったがあれやらこれやらは結構楽しく読ませてもらった。余談ではあるが、これだけ長い物語を書いておきながら参考文献がたったの3冊と言うのはあまりに寂しい。せめて10冊ぐらいは列記されていないと箔がつかないと思ったんだけども。2024/01/12
しんたろー
193
下巻に入って更にテンポが良くなったように感じる・・・内容が濃密で飽きさせない 展開になっていたからだろう。登場人物の視点が変わりながら、日本共和国と様々 な人々の悲哀を描いていて、楽しみながら一緒に考えさせられた。山田さんが初期 作からテーマにしている「生」をSFの形にした快作だと思う。(遊佐、牛島、立花の 3人のシーンをもう少し描いて欲しかったが) そして、ラストシーンの演説の一節「虚無主義を気取る余裕があるなら、一歩でも 前に踏み出してほしい」は白けた現代人への熱いメッセージに大きく頷いた。2016/10/16
にいにい
158
結末はスッキリしたものだった。最後は、想像の範囲内で、読後感は爽快。やはり人間は「死」とともに生きるということ。限られた時間でどう生きるべきか考える機会を与えてくれる一冊。みんなが不老になれるという奇抜な設定をきちんとまとめる山田さんは、凄い。じっくり描かれた世界観と怒涛の展開。意表を突く発動。人間性と未来への期待の回復。人間の選択の尊さに歓びを禁じ得なかった。2015/04/13
ケイ
156
結局、人間が向き合うところは、限られた一度きりの人生をどう過ごすかという事だな。そして、一人の人間が何十年も独裁政権を続ければ、特にその人物が不老不死ならば、その首を狙うものが出るのは必定で、理想国家など机上の空論だろう。HAVIを受けた人は上巻の時点で読者の何割いて、下巻を閉じた時にはそれがどうなっているだろうか。SFにしても、もうひとつ現実味が感じにくかったのは、この時代に外国との相互干渉があまりに少なくおもえたことかな。余談だが、もと大工の男の呼び名が「デーク」にはウケた(笑) 江戸っ子かいっ!2019/11/13