出版社内容情報
小説家、ノンフィクション作家の顔を持つ著者でなければ書けなかった真実「闇サイト」で集まった凶漢三人の犯行により命を落とした一人の女性がいた。彼女はなぜ殺されなくてはならなかったのか。そして何を残したのか。被害女性の生涯に寄り添いながら、事件に迫る長編ノンフィクション。
大崎 善生[オオサキ ヨシオ]
内容説明
2007年8月24日、深夜。名古屋の高級住宅街の一角に、一台の車が停まった。車内にいた3人の男は、帰宅中の磯谷利恵に道を聞く素振りで近づき、拉致、監禁、そして殺害。非道を働いた男たちは三日前、携帯電話の闇サイト「闇の職業安定所」を介して顔を合わせたばかりだった。車内で脅され、体を震わせながらも悪に対して毅然とした態度を示した利恵。彼女は命を賭して何を守ろうとし、何を遺したのか。「2960」の意味とは。利恵の生涯に寄り添いながら事件に迫る、慟哭のノンフィクション。
目次
アスファルトを這う花
巡り合い
優しい時間
丘の上の日々
挫折
混乱の中に
小さく不確かな恋
闇からの声
一夜の出来事
刻まれたメッセージ
反撃
閉ざされた夏
午後の静寂
著者等紹介
大崎善生[オオサキヨシオ]
1957年、札幌市生まれ。2000年、デビュー作の『聖の青春』で新潮学芸賞を、01年『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。02年には、初めての小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
134
2007年夏 闇サイトで集まった凶漢たちに 通りがかりの女性が 殺害された事件を追った本である。 著者は 被害者の側に寄り添いながら、 被害者家族の真摯な生き様を描くが、 簡単に 闇サイトで 犯罪者たちが 知り合いになっていく現代の怖さ、そして永山基準に いまだ縛られている司法界のあやうさを 感じる。 被害者が最後に残した「2960」がとても 哀しい…ノンフィクションだった。2021/12/09
M
131
利恵さんご本人の無念さや計り知れない恐怖や激痛や絶望、お母様の想像もつかない苦悩を思うと、涙無くしては読めない。懸命に真面目に生きてきた被害者側が晒し者にされ翻弄され何重にも傷つけられ、人の心を欠片も持たぬ残虐な加害者が護られ未来を許されるという法の在り方にいつも憤りを覚える。"被害者が頑張ったから犯人たちはやむを得ず残虐化した、そしてこれは最初から残虐な殺し方をした犯行よりも罪が軽い…"暴行に遭いながらも殺されまいと最後まであらゆる知恵を駆使した被害者が悪者のようなこの手の弁護にはつくづく我慢ならない。2016/12/21
ウッディ
117
闇サイトで知り合った3人の男が帰宅中のOLを拉致して殺害した「名古屋闇サイト殺人事件」、その被害者 磯谷理恵さんの31年の人生の軌跡と犯人達の量刑をめぐる母の戦いを描いたノンフィクション。久々にボロ泣きの読書でした。幼い頃に父を亡くし、母娘寄り添って生きてきた理恵さんの人生を知ることで、犯人が奪ったものが、命だけでなくて、挫折の中から掴んだ彼女の夢、母への感謝、恋人との幸せな将来を含めた全てであることがわかる。門田隆将さんの「なぜ君は絶望と闘えたのか」を読み終えた時と同じ憤りと感動を覚えました。 2018/03/04
fwhd8325
112
何とも言葉にならない。こんなにもむごいことがあっていいのだろうか。一人では何もできなく、何も考えを持たない輩が集まり人の命を奪ってしまう。そこの何らかの動機があれば、第三者である私たちも、様々な側面から事件を見ることもあるだろう。だが、この事件は、なぜ起きてしまったのか、起きなければいけなかったのか全く理解できない。辛い読書でした。2017/07/01
修一朗
108
現在も主犯の一人が別件で裁判を続けていることを読んだ後に知り衝撃を受けた。日本の犯罪率は下がっているというが,相手がだれでもよいという無差別殺人事案は減っていないと思う。更生余地診断の限界も分かったことだし死刑廃止を含め,量刑判断についてはまだまだ論議する必要があると思う。「聖の青春」の大崎善生さんが殺人事件のドキュメント?と意外感があったのだが被害者側母娘の生涯を丁寧に追うことで,理不尽な事件を浮き彫りにさせた手法に同じ視点を感じて納得した。こんな偶然の重なりで命を落とすなんて無差別殺人は酷すぎる。2017/07/23