出版社内容情報
マルレ。ベニヤ板製の水上艇で特攻した部隊。秘密部隊ゆえに戦果は秘され、原爆投下直後の広島を救援に奔走した行為は忘れられ、被爆者として戦い続けた歴史は消えようとしている…。彼らの魂を殺してはならない!!
内容説明
被爆地に真っ先に駆けつけて被爆者を助けた秘密部隊の特攻兵たちは、復員後に発症した原爆症と戦い、被曝事実を認定しない国と戦い、周囲の差別と戦った。特攻と原爆によって、二度も死を国に告げられた彼らは、「戦後」を戦い続けたのだ。秘密部隊ゆえに戦果を秘され、原爆投下直後の広島を救援に奔走した行為は忘れられ、被爆者として戦い続けた歴史は消えようとしている。彼らの記憶を、魂を、そして史実を殺してはならない!!
目次
第1章 学徒―学生は、戦地へ送り出された
第2章 志願―見習士官、水上特攻兵となる
第3章 開発―技術者の願いは砕かれた
第4章 戦場―マルレ、戦果をあげ、散る
第5章 敗北―マルレ輸送船、爆沈す
第6章 原爆―秘密部隊は広島を奔走した
第7章 被爆―「戦後」を戦いつづける
著者等紹介
豊田正義[トヨダマサヨシ]
1966(昭和41)年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、ノンフィクション作家に。戦争、犯罪事件から芸能まで取材対象は幅広く、児童書の執筆も手がけている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
132
陸軍の水上特攻艇「四式肉迫攻撃艇」、暗号「○レ」。実態はベニヤ板で造られたモーターボートに250㎏爆雷を搭載したもの。○レ専門部隊「陸軍海上挺進戦隊」は江田島に訓練基地を置き、十代後半の少年兵たちを戦場に送り込んだ。フィリピンへ、沖縄へ。○レは技術者達の人命を救いたいという望みで、生還が期待出来る兵器であった。しかし特攻は生還が許されず、技術者の望みも無となる。東条英機の発言「日本の長所は皆が生命がけであり、死ぬことを何とも思はぬことである」。ここから特攻が広がる。あまりに人命を軽視した発言に唖然とした。2018/01/21
り こ む ん
41
特攻隊と聞くと、飛行機のイメージが強い。大々的に戦意高揚の為、神風、軍神にしたてあげた為、しかし、特攻は空ばかりではない。伏龍、回天など海の特攻も有ることが埋もれている。そんなの特攻の一つに○レが有った。話の2/3は体験者の○レについて…毎回…思うのだけど…物量に敵わない的に肉弾でって…日本人は無限にいるのか?そこは感じないのか?と…兵士不足で10代の若者を特攻要員として召集する…未来を担う若者をどーして捨て駒に使えたのか…本当に分からない…飛行機での特攻に失敗したら、「今度は、ちゃんと死んでこい!」2017/08/07
かいゆう
33
水上特攻艇『マルレ(レに◯)』。海軍『震洋』に似ているが、こちらは旋回して逃げることを考え設計された。けれど求められたのは“一兵一輌”のほかならない。冷めた戦争観を持ち、生きて帰りたいと強く思っていたのが、これが兵器?というようなベニヤのボートを目の当たりにして、どんな気持ちだっただろうと思う。結局目的を果たせなかった彼らが赴任することになったのが広島。原爆投下から30分程で船舶司令官の即断で、民間人救助と消火作業を始めた。救助側の証言を読むのは初めてだが、目の前で次々と死んでいく様子が突き刺さり、2015/11/19
かおりんご
27
マルレ部隊のことは知っていたけれど、震洋との違いや、原爆投下後の被災地支援に駆けつけたこと、何よりも多くの特攻死者を出していたことを初めて知った。この本に出会わなければ、知らなかった話。同じ特攻死でも、航空だと二階級特進になるのに、マルレは秘匿されていたなんて、悲し過ぎます。この間読んだ本といい、陸軍の戦略が無能すぎて、本を読むこと自体がつらい。2021/10/31
読書実践家
6
戦争時の様々な矛盾も含めて、国内、国外事情を詳しく書いている。徴兵猶予されている大学生を警察が検挙する。学生狩りという事態が普通にあったという。原爆の投下地の当初案には京都が含まれていた。文化の中心地を破壊することで、日本人の戦意喪失を狙った。これは、日本に来たことがあるアメリカ人が反対し、京都は投下候補から外された。2016/01/07
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