内容説明
かつて私に夜はなかった―長じて、友と夢中で語り明かした夏の林間学校、初めて足を踏み入れた異国の日暮れ、終電後恋人にひと目逢おうと飛ばすタクシー、消灯後の母の病室…夜は私に思い出させる。自分が何も持っていなくて、ひとりぼっちであることを―知らない場所にひとり放り出されたような心細さと非日常感。記憶の中にぽつんと灯る忘れがたいひとときをまざまざと浮かび上がらせる名エッセイ。
目次
かつて私は夜はなかった
旅のはじまりは夜
夜のアトラス
こわくない夜
世界のどこも、うちの近所ではない
夜と安宿
月の砂漠
暇と求婚
まるごと夜
男を守る〔ほか〕
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞、03年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞。06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
463
夜を描くエッセイ。シーンは主に海外の旅先での夜だ。私自身も、初めて行く街には可能な限り明るいうちに到着するようにはしているが、ままならないのも旅。夕刻には着くはずが、飛行機の遅延で深夜になってしまうことも。そんな不安な感覚はとてもよくわかる。しかも、角田さんの旅は私のそれよりも遥かに冒険的だ。篇中で、ぜひとも体験したいのはサハラ砂漠での夜の体験。全く音というものがないそうだし、空には喩えようもないほどの、文字通りに満天の星。夫婦でラクダにまたがって1か月を過ごす究極旅をしている人もいるらしい。2020/02/05
ミカママ
274
タイトルが秀逸。ページを開く前から胸ときめくじゃありませんか?角田さんと、世界中の夜を旅した気分。私自身も、夜遊びした六本木でラーメン食べながら見た夜明け、仲良しだったはずの彼と終わりにした夜、彼の部屋からの帰り道・・・走馬灯のように。これだから角田さんのエッセイはやめられません。2016/11/06
yoshida
171
角田光代さんの、夜と旅を中心としたエッセイ。読みやすい文体で、すいすいと読了できます。始めて徹夜をした夜、引っ越しの夜、魂が旅する夜等、印象深い内容が詰まっています。私が始めて徹夜をしたのは、大学時代に友人のアパートで飲んだ時かな。大学時代に最後に友人や後輩と家で飲んで話して、他愛もない事で笑い、別れた朝の空の色をいまだに覚えている。引っ越しは職業柄、多いので昨夜と全く違う街に居る自分にそわそわする。魂が旅する話しは角田さんの死生観が垣間見れて印象深い。私自身の経験からも頷けるエッセイ。出会えて良かった。2016/09/10
あつひめ
88
角田さんの敏感な触角に触れた幾つもの夜が、物語を紡ぎ出す素になっているのかも。海外の夜は光り輝き方も匂いも違う。そこから生み出される女心が執筆作業に盛り込まれて読者の私たちの心を震わせるのか。異国…私は角田さんの書くものを読むだけで自分の知らない世界にたどり着いてしまう。星空を見上げて語り合いたくなった。2016/01/06
のんき
85
角田光代さんのエッセイ。旅先の夜のお話し。ビビリなのに、よく海外に貧乏旅行するなあと思いました。夜は、特に怖いとか、わたしなら思ってしまいます。殺されたり、何か盗まれたりなどするかもしれない治安の悪いところも平気で行っちゃいます。そして、わたしまで、著者と同じ場所に行って、同じ経験をした気になっちゃいます。文章が巧いのと、共感する部分もあるからかな。わたしも、綺麗な星空や、美しい月を見てみたくなりましたあ2020/03/09
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