内容説明
国際色豊かな唐帝国の全盛期、玄宗皇帝の時代。遊牧民族の小競り合いが絶えない辺境の地で、ソグド人の父と突厥の母をもつロクシャンこと安禄山は謎の日本人・井真成と出会った。商才を磨きながら武人としての出世を重ねた安禄山は、豊かな経済力を背景に、ついに中央で皇帝と楊貴妃の寵臣に上りつめる。しかしそれは、飽くなき権力闘争の幕開けに過ぎなかった―。唐帝国を揺るがした男の生涯を描く、長編中国歴史小説。
著者等紹介
塚本青史[ツカモトセイシ]
1949年岡山県倉敷市生まれ。同志社大学卒業後、印刷会社に勤務するかたわら、イラストレーターとして活躍。96年『霍去病』でデビュー。2012年『煬帝』で第1回歴史時代作家クラブ賞「作品賞」を受賞。14年『サテライト三国志』で第2回野村胡堂文学賞を受賞。塚本邦雄創刊の歌誌「玲瓏」発行人も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
240
昔の中国王朝の腐敗を描いたお話自体が好きなので、面白いことは面白かった。しかし、ここまで魅力がない主人公も珍しく、権力を手にして堕落したというより、最初から一貫して軽薄で日和見な人物と描かれる安禄山に、イマイチのめり込むことが出来なかった。武術も戦も苦手で、賄賂の授受にも躊躇いがなく、胡麻すりも露骨と、いいところがない。商人的な人生観で成り上がる人物の様を表現したかったのかもしれないが、何か一つでも光るものが欲しかった。楊氏五家の台頭あたりからはとても興味深くなってきたのに、ラストがかなり駆け足で残念。2023/02/28
カザリ
36
司馬の空海を読んでいてふいに気になって読みだしたけど、安禄山よりも王忠嗣とカジョカンに萌えました。というかかわいそうすぎて、燃えました。玄宗とその取り巻きと安禄山は何というか私利私欲感が半端なくて中国の国土の規模から考えても悪い奴のスケールが本当に悲惨な結果を招く。でも高校の時の漢詩で勉強して以来すごい偉人 人格者も多くて燃える!とくに今回は上のふたり。こういう人物の型っていつの世にも現れるけど、こういう人材を使えない指導者がトップだと国民も国も悲惨。腐敗国家の中身を味わえました2019/01/22
糜竺(びじく)
19
いつの時代も人間は、ねたみやそねみや疑いやら野心やら、変わらないなあと実感しました(笑)。2020/10/28
0010
6
平等な立場で読んでみると、頭がよく、生きるために必要な知恵をもっていると感じました。話としては、後半の展開が早足だったようですが、前半の彼の魅力を語りつくした上での文章構成かなと。2015/10/14
てぃと
5
突厥、契丹、渤海、吐蕃、サラセン、それに新羅と日本までと、本書で中国の歴史を紐解くつもりが、なんと国際色が豊かな舞台でしょうか。地図を広げてみれば確かに大唐帝国は広い!その舞台で上り詰めていった安禄山の生涯。安史の乱にも大義名分があったという内容で、私の安禄山のイメージもちょっと変わりました。後半端折った感はありましたが、最後まで広大な中国の大地と悠久の中国文化に思いを馳せながら楽しめました。2019/12/04