内容説明
東京都内の公園で臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見された。やがてテレビ局に“ジャック”と名乗る犯人から声明文が送りつけられる。その直後、今度は川越で会社帰りのOLが同じ手口で殺害された。被害者2人に接点は見当たらない。怨恨か、無差別殺人か。捜査一課のエース犬養刑事が捜査を進めると、被害者の共通点としてある人物の名前が浮上した―。ジャックと警察の息もつかせぬ熾烈な攻防がはじまる!
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年、岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
362
やっぱり中山七里の本は安心して読める。これは大きい。物語の展開もクライマックスに向けて息もつかせないし、さらにその上ヒネリも効いている。物語のテーマも、臓器移植推進の為に急がれたとされる脳死=人の死とする定義に疑問を投げかけており、非常に考えさせられる。ラストシーン、他人に移植された我が子の心臓の鼓動に耳を寄せる母親の思いは、人の親なら誰しも共感出来るところだろう。さて、本作はシリーズ化されているようなので、次作も読もう。安心して。2023/06/02
SJW
297
カエル男殺人事件の時は、刑法第39条の問題提起だったが、今回は臓器移植の問題提起。カエル男殺人事件の古手川刑事が再登場!事件の捜査でいかに犯人を追い詰めていくかがミステリーの醍醐味と言えるが、この小説では臓器移植の法律や運用における課題について今回知ることができた。様々な意見があり、それぞれ納得する部分もあり、ドナーやレシピアント、その家族の悩みは計り知れないと思う。臓器移植に懐疑的になりつつあったが、最後の本来なら許されないドナーの家族とレシピアントのふれあいに涙が溢れた。このように両者がが幸せになれれ2017/11/14
イアン
225
★★★★★★★☆☆☆医療ミステリの趣を色濃く感じる刑事犬養隼人シリーズ第1弾。都内で臓器をくり抜かれた女性の遺体が発見される。その後「ジャック」と名乗る犯人の声明文がテレビ局に送り付けられ…。実在した殺人鬼と臓器移植を絡めたプロットの大胆さに驚くが、そこに事件を追う刑事・犬養自身の移植問題を絡めるのはさすがにやり過ぎな気も。とはいえエンタメ作品としてこれくらい振り切った設定は嫌いじゃない。疑問点があるとすれば、合同捜査とはいえ警視庁と他県警の刑事がペアを組むことがあるのかという点と、本末転倒な真の動機か。2022/02/03
ちょこまーぶる
213
読後は「やっぱり面白いな」と納得した一冊でした。ジャックの引き起こす猟奇的殺人事件の被害者の繋がりは臓器移植という共通点が・・・この設定だけでも話の中に引きづりこまれてしまいました。そして、単に殺人事件を解決するだけではなく、臓器を提供する側の家族、提供される側の本人・家族、移植コーディネーターのそれぞれの考え方が読んでいて、多少今までよりも理解できたような気がします。臓器移植に関しては、今でも賛否が分かれるところだと思うけど、それに実際関わっている人たちは、事例毎に心・倫理の葛藤と戦っているんだろうな。2019/08/09
ゆのん
211
刑事犬養隼人シリーズ1作目。臓器移植をテーマにした猟奇殺人ミステリー。タイトルに『切り裂きジャック』とあるのでもっと模倣犯罪や犯行声明などがあると期待しすぎてしまったらしい。思ったよりもジャック色が薄いのは残念だったが内容は犯行の手口の割に落ち着いたミステリーだったように思う。臓器移植の問題は非情に奥の深い事を再認識させられた。2018/03/24