出版社内容情報
船宿「松波屋」に新顔がやってきた。船頭の弥生が女であること、裏稼業が「とんずら屋」であることは、絶対に明かしてはならなかった。いっぽう「長逗留の上客」丈之進は、助太刀せねばならない仇討に頭を悩ませて。
内容説明
女であることを隠し、伊勢崎町の『松波屋』で船頭を務める弥生。この船宿には裏稼業があった。何かから逃げだいと望む者を、金子と引き換えに綺麗に逃がす、「とんずら屋」。宿に長逗留する丈之進は、こちらもわけあって呉服問屋の跡継ぎを装っているが、国許からの「仇討の助太刀をせよ」との要請に、頭を悩ませていた。そんな船宿に、お鈴という新顔の女中が。どこか武家の匂いが漂うお鈴、それぞれの事情が交錯して―。シリーズ第2弾!
著者等紹介
田牧大和[タマキヤマト]
1966年東京都生まれ、明星大学人文学部英語英文学科卒。市場調査会社に勤務の傍らインターネット上で時代小説を発表。2007年「色には出でじ 風に牽牛」(『花合せ 濱次お役者双六』に改題)にて第2回小説現代長編新人賞を受賞し、作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤枝梅安
74
タイトルそのままの正統派時代小説。潤いのある文体は、読者によってはベタついた文体と感じるかもしれない。松波屋に新しく奉公に来た女中とその息子と思しき少年。しかしその女中の言動は武家の娘のそれだった。弥生こと弥吉が武家の出ということも見破られる。弥生は自分の過去とその女の過去を重ね合わせていく。セリフと心の動きで紡いでいく秘められた過去の悲劇。歌舞伎の筋立てのような展開がまさにこの小説のタイトルにふさわしい。武家と町人の埋められない溝を描いた秀作。2014/04/09
ぶんこ
38
面白かったです。 御家騒動はいつの時代にもあるんだなぁと。 毎日毎日、策を練っては虎視眈々と時期をみているなんて、そんなので楽しい人生なのか? 市井の人として、心穏やかに呑気に暮らすのが一番。 弥生さんには、ただの女将さんになって欲しいけど、そうもいかなそうな流れですね。 鈴音さん、徳松君、澤門さんの3人の行く末も穏やかなものではなさそうで、ホッとした結末とはならなかったですが。今出来る最良の結末なのでしょう。2014/05/20
ゆずぽん
36
新顔の女中がやってきた松波屋で新たな騒動が起こる、シリーズ2作目。ただの仇討ではなく、いろんな事情が交錯してややこしいことに。メインは若旦那、でもラスト弥吉の采配はあっぱれでした。2作を読んで、やっと全体の登場人物の人となりが固まってきたので、これからもっと面白く読めそうです。が・・・まだ出てないのね~残念2018/04/11
楽駿
31
川崎図書館本。とんずら屋のお話よりは、今回は弥生に関わる、お郷の思惑が、大きく左右していた。少し、お武家さまのお話が中心で、庶民の江戸ものが好きな私には、良い部分と悪い部分が混在かも。江戸ものの庶民ものが好きな理由は、きっと、その悩みや、出来事は、時を越えても、立場を越えても、人として誰もが等しく持つ思いだと思うから、納得も、共感もできるから。武士の立場は、理解できる部分ばかりでないので。2022/02/16
はつばあば
29
江戸時代の19歳といえばいいお年。弥吉と弥生・・女として目覚めてきた。人の上に立つ素質も要因もある。表と裏のある生活も魅力的だし、それを助ける人材も魅力的。弥生と進右衛門、弥吉と啓治郎・・・ちょっとモテ過ぎません?。しかも草にまで・・。羨ましい・・(*_*)。次はどうなる?忘れないうちに次作をお願いしたい。2014/07/20
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