出版社内容情報
松本 清張[マツモト セイチョウ]
著・文・その他
内容説明
天正3年、軍師・黒田官兵衛の運命が動き出す。播州御着の城主・小寺政職の家老だった官兵衛は、毛利を捨てて織田につくよう進言し、自ら使者として豊臣秀吉に謁見する。軍師としての才を認められ、智謀を発揮して秀吉の中国攻めを支える官兵衛だったが、卓越した才能ゆえに敵方に囚われてしまい…!?黒田官兵衛の生き様を描いた表題作ほか、「逃亡者」「板元画譜」2編の胸躍る傑作時代小説を収めた珠玉の作品集。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年福岡県北九州市生まれ。給仕や印刷工を経て朝日新聞西部本社に入社。51年に「西郷札」で第25回直木賞候補、53年に「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞受賞。56年、朝日新聞を退社し、作家生活に入る。67年、吉川英治文学賞、70年、菊池寛賞、90年、朝日賞を受賞。92年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とん大西
122
播磨灘物語、黒田如水、軍師の門…と、しつこいぐらい軍師官兵衛の話を読んでしまいます。本作も官兵衛が官兵衛たる所以の名場面-〈有岡城幽閉〉と〈中国大返し前夜〉-に歴史的好奇心をくすぐられながら読了。淡々とした筆致ながら司馬さんとはまたひと味違う清張風官兵衛も趣ありでした。脳内キャストはやはり岡田官兵衛と竹中秀吉のバディですが。2021/05/04
どぶねずみ
33
短編小説ではあったけど、本書のタイトルである『軍師の境遇』が一番ページ数も多く、インパクトもあった。数年前の大河ドラマを思い出すが、官兵衛はなぜ幽閉されていたのか細部をかなり忘れていたので、思い出すことができて良かった。竹中半兵衛との友情はとても感動するが、会えずに亡くなっていたこと、後から息子を助けてくれたと知ったことはとても泣ける。この3編は大河ドラマとリンクする記述が多いが、最終話の『板元画譜』も来年の大河ドラマと被る箇所が多そうだ。『軍師の境遇』以外は読みにくさを感じた。2024/01/30
シュラフ
21
巨匠3人の作家の黒田官兵衛を読み比べ。『播磨灘物語』(司馬遼太郎)、『黒田如水』(吉川英司)、そしてこの松本清張の『軍師の境遇』。松本清張の手にかかるとどんな書きぶりと展開になるのかという期待感があったのだが、とても平凡な書きぶりで拍子抜けした。解説によれば、高校生向けに書かれたとあり成程との思い・・・黒田官兵衛の物語を読むというのは 一時期その親密なパートナーである秀吉の物語を読むということでもある。一方面司令官から天下人へと駆け上がる秀吉がこの時期にどのように豹変していったのか興味深い話である。2014/12/29
kiki
12
播州城主の小寺家に使えた黒田官兵衛。毛利方が優勢と見られる中、織田方につく事を進言した。特に目をつけたのが羽柴筑前守秀吉でいずれは天下取りできるほどの力を見抜く。信長の死の際は、秀吉に「運が開けた」と進言して天下取りを実現させた。秀吉が警戒と疑惑を持ったため隠居したが、真の力を発揮すれば天下取りも夢ではない男。この軍師黒田官兵衛の境遇を描いた作品。2017/10/16
とし
11
タイトルの作品を読みたくて買った。秀吉の軍師・黒田官兵衛の物語。松本清張はどう料理するのかと、その点を期待してたのだが、思いのほかスタンダードな「歴史小説」だったのでガッカリ。司馬遼太郎の「播磨灘物語」の以前は、この清張版が最高だったのか、そもそも短編でこの題材はこれが限界だったのか。この時代は自分でも書いただけに、新たな「発見」がなかったことが寂しかった。収録作の『板元画譜』――江戸の浮世絵や黄表紙の世界(本屋の蔦重、写楽や歌麿、山東京伝に馬琴などなど)を描いた作品―ーの方が再読だけど面白かったなあ。2017/04/20