出版社内容情報
女たちの旅は、いつも危うくて本気――ハワイ、パリ、江ノ島……6つの旅で傷つきながら輝いていくマユ。凝縮された時と場所ゆえに浮かび上がる興奮と焦燥。終わりがあるゆえに迫って来る喜びと寂しさ。鋭利な筆致が女性の成長と旅立ちを描く。
金原 ひとみ[カネハラ ヒトミ]
著・文・その他
角川書店装丁室 鈴木久美[カドカワショテンソウテイシツ スズキクミ]
著・文・その他
内容説明
中学校にも行かず半監禁状態の同棲生活。高校は中退しヤクザに怯えながらもナンパ男を利用して楽しむ沼津への無銭旅行。結婚後、夫への依存と育児に苦しみながら愛情と諦念の間を揺れ動くパリ、ハワイ、イタリアへの旅。そしてふと生きることに立ち止まり、急に訪れる江ノ島への日帰り旅行。少女から女、そして母となりやはり女へ。転がる石のようなマユがたどる6つの旅の物語。第27回織田作之助賞受賞作。
著者等紹介
金原ひとみ[カネハラヒトミ]
1983年東京都生まれ。2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞しデビュー。同作品で04年に第130回芥川賞を受賞。10年には『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を、12年には『マザーズ』で第22回ドゥマゴ文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
389
6つの短篇から構成される。これらは連作といえなくもない。冒頭の「女の課程」も家出しているので、これもある種の"TRIP"だろう。以下は沼津、パリ、ハワイのハナと"TRIP"が続く。また、中学3年生に始まり、やがて成人して子どもを持つにいたる、その「女の課程」もまた"TRIP"だ。では、"TRAP"は?なんだか、子どもを持ったことが"TRAP"であるかのようにも読めてしまうが…。さて、小説としてはだが、金原ひとみにしてはインパクトに欠けるようだ。最初の2作はまだしも、しだいに普通のおばさん化⇒ 2019/10/09
ミカママ
201
久しぶりの金原作品。あまり期待せずに読んだけど、あっという間にのめり込んでしまった。ただし、この主人公はいただけない。共感できるところが少なかったなぁ。金原さんは、女性性をある意味否定するような内容を書くけれど、受け止め方はそれぞれ。どの短編も私的には、ラストはおいてきぼりされた感が強い作品集でした。2016/05/29
ゆいまある
105
マユという少女を巡る連続短編集。大麻やって中学に行かなくなり、パチ屋の寮で軟禁されるような同棲生活を送る15歳。母とは不仲。17歳、ユウコと2人ナンパされながら遊び暮らす。次はパリでインタビューを受けている。一緒にいるのは夫。この辺りからマユと作者の区別が曖昧になる。どこまでが私小説なのか。次の次の短編では怒りながら育児している。一人の不良少女が母になるまでのドラマチックな物語。喜びも悲しみも心地よく肩の力が抜けた文章で描かれ、それは夫の影響のように見え、金原ひとみとは夫と2人のユニットなのかなと思う。2022/03/01
misa*
49
久しぶりの金原さん。これって私小説?って思っちゃう。マユの10代から20代までのお話。10代の頃って生きてることが精一杯で、生きてるって何だろう、自分って何だろう、みたいなことをやたらと考えてた。結婚して出産して、自分以外の守るべきものが出来た時に生じる妥協だったり忍耐だったり、そういった揺れる感情がダイレクトに描かれてて、懐かしさもあるしとっても共感した。ま、マユは大人になってもマユのままな部分もあって、そこが魅力的と感じるかそうじゃないかは好みだろうな。2023/09/27
MINA
30
織田作之助賞受賞作らしい。『マザーズ』はものすごく好きだったのだけれど、著者の作品手に取ると大体が主人公の女が情緒不安定過ぎたりドラッグ出てきたり…と定型のように思えてしまい少々辟易。あと文体。会話と主人公の激しい感情が延々と吐露されてるだけで読みにくい。それら全て著者の持ち味なのかもしれないけど、あまり私は好きにはなれない。章が変わる毎に成長…とあるが、中学行かず半監禁状態→高校中退してナンパ待ち→編集者の夫に依存しまくり…と章ごとにぶつりと切れてる印象で、オチや過程を数行でいいから説明してほしかった。2016/05/17