出版社内容情報
『黄金の王 白銀の王』で話題の著者の原点にして、圧巻の人間ドラマ!!
せめぎあう二つの正義。争いは人間の本能なのか? 一隻の船が無人の惑星に漂着したことからドラマは始まった。属す星も、国家も、人種も異なる人々をまとめあげたリーダーに、救援後、母星が断じた「罪」とは!?
内容説明
一隻の船が無人の惑星に漂着したことからドラマは始まった。属す星も、国家も、人種も異なる人々をまとめあげたリーダーに、救援後、母星が断じた「罪」とは!?争いは人間の本能なのか?厳格な法なくして人は拳をおさめられないのか?信念を貫き通す男と、彼を愛するがゆえ、それを阻もうとする仲間たち。二つの“正義”がせめぎあう。『黄金の王 白銀の王』で話題の著者の原点にして、圧巻の人間ドラマ。
著者等紹介
沢村凛[サワムラリン]
1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nins
50
宇宙SFの形をしているが、内容はかなり濃い。宇宙船イフゲニア号の事故で降りたのは無人無文明惑星。取り残された二百三十一人。弁護士のラビルは皆をまとめていく。ジャーナリストのフレオン、航海士のリュタさらにアムネスやミラドスなど個性的な面々。生きるために必死に努力していく。離反する者。一つの事件。救助艇で母国へ帰った後に待っていた裁判と下される決断。後半からの急展開。ラビルの信念。フレオンの想い。国と法、人と人の繋がり。正義とは何か。法と信念。最後まで読ませる一冊。2013/06/08
Mumiu
49
彼の罪はほんとうに罪なんだろうか⁈誰よりもその国の理念に忠実に生き、その職業を現す通り、常にまわりの全ての人に対して正義で公平であれと自分を律し続けたラビル。もし、マローナが「わたしは離婚したから彼とは関係ないわ!」とラビルの弁護士を買って出てかつての輝きを取り戻し無罪を勝ちとる、ラビルも惚れ直すなんて展開もと妄想したが・・・コメディですねf^_^;。判決後も頑固を通し国家の思惑より、理念に走りコメディな結末だったりする。なんだ、結局みんな彼をすきなんだ⁈究極の人間讃歌だよなあ。やっぱり沢村凛、すきかも。2014/04/25
dr2006
43
一つの国の単位が星、戦争を経て星団連合の実現に向かう未来の物語。SFならではの無茶な設定だけど、超未来の話なので'92年刊行も古さを感じない。ワープに失敗し辺境の無人星に漂着した人々は、人が生存出来る環境のその惑星で自治国家を形成する。0からの国家形成の過程とサバイバル渦中の集団心理、国で起きる犯罪への裁き、法治国家において他人の命を絶つことの功罪、これらを深く考える機会となった。沢村さんは別ジャンルの一冊「あやまち」を読んでいたが、SF社会派ドラマともいえる本作を読み、抽斗の広さに驚いた。読み応え有り。2021/01/27
いーたん
38
思うことはいろいろある。死刑や正当防衛、緊急避難について主義主張は誰にだってあると思う。けど、この話しを読み終えて思ったことは、最後に救いがあって良かったと。メリエラ人としてラビルの生き方は尊敬に値するけど、他星人からしたら、頑ななめんどくさい奴だな。どんなことでも例外を認めると、特例に際限がなくなるとも思うけど、それでも例外はあるとも思う。相反する二つの命題に対するにはバランス感覚が必要なのかな。思ったことはいろいろあったけど、言葉に出来ない。だけど、この話はこれからも考え方ていかないといけないと思う。2013/11/23
アイゼナハ@灯れ松明の火
31
沢村凜デビュー作の加筆修正版だとか。星間航行の事故により辺境の無人惑星に漂着したイフゲニア号の生存者231名。第1部では文明人が原始国家を創造するにも似たリアルなサバイバルの様子を感心しながら読んでましたが…2部に入ってテーマは一変。人が人を殺すことの罪について、正論同士が火花を散らす圧巻の物語となりました。自分の中でも落とし処が分からなくなるこの不穏さよ。フレオンの気持ちに共感するんだけど、信念と責任を秤にかけて責任を選んだラビルに、信念まで捨てろと迫る傲慢さも他人事ではないというね…考えさせられます。2012/07/28