出版社内容情報
人間の愛と赦しをテーマにした大ベストセラー!妻・夏枝が逢い引きをしている隙に3歳の娘を殺害された辻口は、夏枝への復讐のために、密かに当の殺人犯の娘・陽子を養女にする……。
三浦 綾子[ミウラ アヤコ]
著・文・その他
内容説明
辻口病院長夫人・夏枝が青年医師・村井と逢い引きしている間に、3歳の娘ルリ子は殺害された。「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えと妻への復讐心から、辻口は極秘に犯人の娘・陽子を養子に迎える。何も知らない夏枝と長男・徹に愛され、すくすくと育つ陽子。やがて、辻口の行いに気づくことになった夏枝は、激しい憎しみと苦しさから、陽子の喉に手をかけた―。愛と罪と赦しをテーマにした著者の代表作であるロングセラー。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922年、北海道旭川市生まれ。旭川市立高女卒。59年、三浦光世と結婚。64年、朝日新聞社の懸賞小説に『氷点』が入選、国民的ベストセラーとなる。人間の愛、原罪、祈りなどをテーマに、多数の著書を遺した。99年、77歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
322
もの凄い小説!『愛と罪と許しをテーマにした著者の代表作』とあるが、未だ上巻、それでも読み手に迫りくる圧力を感じる!病院長夫人の夏枝は美しく、夫の愛と子宝に恵まれていた。しかし若き医師と逢い引きしてる間に愛娘が殺害される。夫は妻への復讐の為、獄中で自殺した犯人の娘を引き取り養子に迎える。何も知らない夏枝は陽子と名付け、喪った愛娘以上の愛情を注ぎ、陽子は天使のような性格で美しく育つ。やがて夫の復讐心からの行為を知った夏枝!『疑心暗鬼』という人間関係の悪魔が蠢き作品中で膨らむ不穏❗ヤバい予感しか、しない‼️🙇2019/09/06
🅼🆈½ ユニス™
179
節制された活字で的確に伝わる感情、秋風に揺れる葦のような人の心を見事に描いている。不運(?)が重なり我が子を殺された親の悲しみの上に、おまけに猜疑心から招いた誤解は膨らんでやりどころのない憎しみを持って一生を暮らす、そんな辛い生き方しか出来ない啓造と夏枝が哀れで居た堪れない。他の生き方があるとしたら、憎まない事。憎まない為にはどうするか。愛するしかないのではないかと思う2人であったが、体は付いて行けない。歯をくいしばって本音を隠して互いは追いつ追われつ…。下巻に続く。2018/10/04
mukimi
142
圧倒される。妻の不貞を許せず実の娘を殺した犯人の娘を妻に育てさせた医師の夫。あまりにも有名ながら先を予測させないストーリー展開、登場人物一人一人のキャラの濃さ。何度もドラマ化された昭和の名作の引力に本を捲る手が止まらない。これがデビュー作というのだから当時の文壇はひっくり返ったことだろう。ずっと読みたかった本がやっと読めた。時代設定としては祖父母が働き盛りで父母を育てていた高度経済成長の頃だろうか。昭和の人々の真っ直ぐさ、無駄のない生活にどこか懐かしさも覚える。とにかく止まらずに下巻へ。2023/01/20
Nobu A
126
三浦綾子著書初読。65年刊行。きっかけは本作50周年記念に実施された三浦綾子文学賞を河﨑秋子が受賞したことから。まず読み始めて懐かしい昭和の昼ドラ臭が漂う。端正な筆致。登場人物の鉤括弧の発話と丸括弧の心の呟きと言う手法で物語が進展。病院長の辻口啓造と妻、夏枝の3歳の娘が殺され、妻の浮気に対する復讐として犯人の嬰児を引き取ると言うミステリーの醍醐味とも言える大胆なプロット。しかも「汝の敵を愛せよ」と聖典が底辺に。54年の洞爺丸事故も組み込み淡々と物語は進むが、徐々に息が荒れ終いには酸欠状態。下巻へと続く。2025/02/07
ナマアタタカイカタタタキキ
126
罪の普遍性とは。『汝の敵を愛せよ』とは。起きた不正義に対しては、貴方ではなくて神が報いと償いをするから、貴方はあくまで善をもってその悪に臨みなさい…と。このように言葉にするだけなら簡単でも、躊躇せずこの教えに従える者がどれだけいるというのか。些細な切っ掛けで起こった惨い事件により我が子を喪った啓造と夏枝は、悲しみの中も幾度となく試練に見舞われ、その度に各々の罪の意識と向き合わされる。しかしそれは、己の醜悪な部分、特に利己的で卑しい面をも見つめることにもなる。辻口一家に赦しと救いはあるのか。ひとまず下巻へ。2021/05/01