出版社内容情報
不穏にして幸福な男の一生
子を宿し幸福に満ちた妻は、病気の猫にしか見えなかった……。女を苛立たせながらも、女の切れることのない男・櫻田哲生。その不穏にして幸福な生涯を描いた、著者渾身の長編小説。
内容説明
仕事にも、妻の妊娠にも、どこか他人事のようにしかかかわれない僕。僕はどんな子供時代を過ごし、どんな女たちとかかわってきたのか。小学生の僕を怯えさせた音楽の清家先生、ストーカーまがいに追い求めた璃子、一度捨てたのに再び関係することになった昌、行きずりに知り合ったもうひとりの璃子、そして僕の骨を保管する女…。女を苛立たせながら女が途切れることのない櫻田哲生の不穏にして幸福な生涯。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京生まれ。89年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞。2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で第139回直木賞、11年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けいこ
39
ある男の生涯の断片を綴った10章。他人事のように冷めた感情、何を考えているのかわからない、捉えどころがない男。二股はするし、職も長くは続かないし、全く魅力が無い。関わる女性もひと癖あって怖い。捉えどころの無い男と言えば、川上弘美さんの『ニシノユキヒコの恋と冒険』を思い出したけれど、断然ニシノユキヒコの方が魅力的。ラストは冷めた男の唯一の執着が成就した形になったのか、結局、幸せな男だったのか。どこにも共感出来ないし、低いテンションが続く作品だけれど、何故かどんどん引き込まれたのは井上荒野さんの成せる技か。2022/06/15
てふてふこ
11
関係する女からも「悪くはないがわかんない人・いて、いない人」と評される、熱量の無い、櫻田哲生という男。ふわふわと成り行きで生きてるが、悪気ない様に現れる裏切り行為。内面の「獣」が覗えた・・。面白かったです。2013/07/27
桜もち 太郎
10
10の物語すべてに「櫻田哲生」が出てくる。この男いたって普通でかなり印象が薄い。生活に対する執着がないのか、せっかく本屋の店長に就任してもすぐにやめてしまう。結婚生活も長続きはしない。しかし女性に対してはストーカーなみに執着する。その相手は璃子。夜になると璃子のアパートに張り付くし、たまには電話して部屋に入り一夜を共にする。物語としてどうなのと思う。また昌と呼ばれる劇団員との不倫もあったり、振り幅がすごい。でも魅力はないんだよな櫻田哲生は。物語としての統一性も全くない。→2025/08/18
のの
8
櫻田哲生は何だかんだいってセックスに持ち込むのが単に上手い、天然系キモい人だと思う。 世の中はこういう男の人に結構甘いのなんでだろ。2017/06/02
ken
5
全10章からなる中編小説。各章は「櫻田哲生」という男の生涯の断片で、それらがランダムに配置される。章を重ねるごとに「櫻田哲生」という男の人生も少しずつ明らかになるわけだが、彼自身の輪郭だけはいつまでも模糊として捉えようがない。彼の内面には謂わば人間的な血の気が通ってるとは思えず、「無個性」な彼は読者からの一切の共感を拒んでいるようだ。それでいて本作が不思議な魅力を持っているのは、人間が持つ不可解さ、不気味さをまるで秘密を明かすかのような読者へささやくからだろう。タイトル『あなたの獣』とは多分そういうこと。2018/07/31
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