出版社内容情報
陰謀と謀反唐亡国の危機に、日本人文官・阿倍仲麻呂は対決をいどむ。
日本と唐、警察権力を握る楊国忠、兵馬の大権を持つ安録山、そして日本人文官、朝衡、楊貴妃に溺れる老皇帝玄宗。それぞれの思惑が錯綜する中、玄宗皇帝の近衛兵となった真幸の運命は??。
内容説明
玄宗側近の楊国忠に賄賂が流れ込む。国難を憂えた朝衡、すなわち阿倍仲麻呂は、密かに楊貴妃暗殺計画を練るが、真備は冊封体制下に入ることと引替に、玄宗から新羅への不干渉と、天皇号承認を引き出す。揺れ動く国情、戦いの予感。一方、冊封使となった朝衡は実に三十七年ぶりに帰国することになり、鑑真の渡海に手を貸すが遭難、唐に舞い戻ると、安禄山が謀反を起こし―。近衛兵となった真幸の運命は?歴史活劇の白眉。1999年読売文学賞受賞作。
著者等紹介
辻原登[ツジハラノボル]
1945年和歌山県生まれ。90年「村の名前」で芥川賞、99年『翔べ麒麟』で読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で谷崎潤一郎賞、05年『枯葉の中の青い炎』で川端康成文学賞、06年『花はさくら木』で大佛次郎賞、10年『許されざる者』で毎日芸術賞、11年『韃靼の馬』で司馬遼太郎賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
53
玄宗皇帝の老いらくの恋と安史の乱に戦々恐々としながらも、遣唐使一行は鑑真の日本招聘と阿倍仲麻呂の帰国願いに奔走する。華やかさ、頽廃的な雰囲気と風雲急を告げる戦の足音と、唐末期の雰囲気を肌で感じられる楽しいエンターティンメントに仕上がっていて、とてもおもしろかった。2016/03/26
KAZOO
26
史実と物語が一緒になっているので、読みにくい人もいるのでしょうが、私はエンターテイメントと割り切ってその中に史実に出てくる人もいるということで楽しんでいます。夢枕さんの空海や陰陽師などと同じと割り切って楽しんでいます。2014/07/30
もりやまたけよし
21
遣唐使を掴みにした唐代の安録山の乱に話は移ってきました。遣唐使で派遣された日本人が主人公なのでどうもしっくりこないまま結末を迎えてしまいます。正直、話の主軸を日本人か安史の乱のどちらかにしてほしかったな。2024/12/21
河内 タッキー
15
阿倍仲麻呂の唐での活躍を、やや日本人目線で語る話は少ない。架空の人物が活躍し、フィクションもかなり入っているが、うまく史実に溶け込ませている。阿倍仲麻呂の「あまのはら・・」や、杜甫の「国破れて山河あり・・」の嵌め込み方がうまい。この時代の人物の関係をさらに知りたいと思った。2018/08/07
みっちゃんondrums
14
安史の乱の頃の話になる。史実と創作が入り混じるのは歴史小説としては当然だが、主人公のモテ男、藤原真幸は実在していなかったのね。日本に帰れなかった可哀そうな遣唐使というイメージの阿倍仲麻呂=朝衡が、たくましい策士として描かれていたのが面白かった。ただ、ほかの著者だったら泣かせどころだろうと思われるシーンで泣けなかったのは、物足りない。この著者の個性なのか、わざとあっさり描いたのか。人の描き方が一面的ではないところには好感が持てる。そして、この時代の東アジアの国際情勢に興味を抱けたのは収穫かな。2014/11/21