出版社内容情報
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著・文・その他
内容説明
社会に煽られ、急かされ続ける人生を、一体いつまで過ごせばいいのか。「それは何のためだ、何の役に立つ?」世間は「目的を持て!」とうるさい。しかし、人は生まれる前にその問いを立てたのか、死ぬ直前にその問いを立てるのか。「人生に目的はない」と『小さな倫理学』を唱える倫理学者が贈る、解放の哲学。
目次
第1章 ゴジラのために
第2章 都会と倫理学
第3章 劣等感と城壁
第4章 “私”という迷宮
第5章 風の中の倫理学
第6章 終わらない愛
第7章 ぐずぐずの倫理学
第8章 倫理学の海
著者等紹介
山内志朗[ヤマウチシロウ]
1957年生まれ。山形県出身。慶應義塾大学文学部教授。東京大学大学院博士課程単位取得退学。新潟大学人文学部教授を経て現在に至る。専門は中世哲学だが、現代思想、現代社会論、コミュニケーション論、身体論、修験道、ミイラなどについても幅広く研究・発表している。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
禿童子
27
読み終わった感じは悪いものではない。スコラ哲学に傾倒してスピノザの『エチカ』にたどりついたご様子。引用「人生は偶有性の集積と考えることもできる。しかし、人生が偶有性の集積だとすると、さいころを転がし続けるようなことが人生ということになり、目的は見失われる。」「目的がないとは、 予めないということであって、最初から最後まで、現実化しないということではない。目的は最後に現れる。」「しかし、人生は評価されるためにあるのではない。それが「尊厳」ということの意味である。比較不可能であり、評価不可能なのだ。」 2018/03/21
しゅん
21
「目的」は後からしか発生しないという本文中の一節に従うように、本書は主旨を明らかにしない書き方になっており、話が煮込まれていくかと思いきや中断して次に進み、似たような話が別のところで現れるような感覚を生む。曖昧さに留まることを主張しており、空白を「器」として肯定する。全く卑近な話だが、仕事中に何も考えたくない時に(しかしやらねばならないことが迫ってる時に)、何もしないことに賭ける必要もあるなと考えたりしている。自らのアトランダム性を受け入れる、みたいなこと。2022/02/14
テツ
17
人には確固とした生きるべき理由などない。どんな人にもそれはない。あなたが今生きる理由があると思っているのならそれは幸せな錯覚だ。ただ大きなテーマとして、大きな運命としての存在理由はないとしても、小さな生きる理由というものは日々の暮らしの中にいくつもあってその積み重ねを糧に人は生きていけるのだとは思う。人生には目的も価値もない。ぼくの存在もそれは同じだ。目的も価値もない。ただそうしたことをしっかりと自覚しながらぼくが生きることにはきっと価値があるのだと信じたい。2020/07/03
まる@珈琲読書
12
★★★★★ ■感想:「楽しき生きるって何?」という題目で学生と語り合う機会があり、参考にと本書を手に取った。想定以上に濃い内容で読むのに時間がかかり当初の目的には間に合わず。しかし、自分が考えた内容を整理するのに参考となった。仕事や学習では目的という指標があった方が楽だが人生では目的にこだわる必要はないと思う。 ■学び:裁く倫理よりも救う倫理。真空恐怖。何もないこと、何もしないことも豊かさの器。目的は存在しない、目的は作るものだから。人生は評価されるためにあるのではない、それが尊厳ということの意味である。2018/09/25
amanon
9
一貫した流れがあるわけではなく、時に晦渋な表現も散見されるが、それと同時にはっと驚かされる言葉も少なからずある哲学エッセイ。人生の終わりがある程度見えてきた年齢に達し、自分の人生に果たして目的といえるものがあるのか?目的に向かって進む人生ももちろんありだろうし、それを著者は敬遠はしても、全面から否定はしないだろう。つまり、最終的な目的を設定するのではなく、その時その時で人生に意味を見出すような生き方を肯定しているのではないだろうか?と朧げながら思わされた。目的なき倫理学の書エチカを再読したくなった。2019/12/09