出版社内容情報
とある下町の寄席・八百万亭は、不思議な現象のせいで「おばけ寄席」と評判。そこへ腹を空かせた青年が偶然訪れる。彼はその現象を引き起こす寄席わらし・フクちゃんのご飯係「特座」となるが……!?
内容説明
とある下町の寄席「八百万亭」は、不思議な現象が尽きず「おばけ寄席」と評判。その軒先の軽妙な太鼓に惹かれた青年・晴坊は、皆に煙たがられるおばけに出会う。寄席の主人に差しだされた玉子サンドの誘惑に負け、見返りにそのおばけ・寄席わらしのフクちゃんのご飯係「特座」となった晴坊。彼は兄弟子から「ドヘタ」と怒鳴られながらも、落語を糸口に桜の海苔巻きを作ったりと、慣れない料理に奔走する。その前向きな姿は寄席の皆にも伝わり始め―!?いつか高座に上がることを夢見る、人情深く温かい寄席ごはん。
著者等紹介
名取佐和子[ナトリサワコ]
兵庫県生まれ。明治大学卒業。ゲーム会社に勤務した後、独立。ゲームシナリオライターとして活動する。2010年『交番の夜』(リンダブックス)を上梓。小説家としての活動もはじめる。著書に、第5回エキナカ書店大賞を受賞した「ペンギン鉄道 なくしもの係」シリーズ(幻冬舎文庫)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yanae
70
大好きな名取さん作品♡今作は落語がテーマ。ホームレスになりかけていた主人公は、寄席で子供の姿を目撃。子供は座敷わらしならぬ寄席わらし。見える特別な能力のおかげで、寄席に特座として寄席わらしのお世話係兼落語の弟子としてつとめることに。寄席わらしはいたづらもするけど、幸せも運んでくる。読んでて何度も泣きそうになった。晴坊となった主人公が落語を学んでいくのも面白いし、落語の話を知れるのも面白い♡何より寄席わらしフクちゃんがかわいい♡また晴坊とフクちゃんにあいたい♡続編希望です!2019/09/08
野のこ
62
寄席わらしのフクちゃんが喜んでくれる晩ごはんを♪悩んでる人や困ってる人が元気になるようなごはんたちばかりでじんわりと心も温かくなりました。フクちゃんの大好きなカレーライス食べてみたいな。考えたことなかったけど福神漬けって作れるじゃん!今度やってみたいです。朝露さんは性格キツくて初めへこみそうになったけど、優しかった。ムチ多めでほんのちょっと飴。ご飯にも落語を絡ませてて、落語のこと知ってたらもっと楽しめたかも。でもフクちゃんがとにかく可愛くて癒されました。2019/06/28
ぶんこ
37
心温まるほっこりするお話でした。ホームレス寸前だった僕が、寄席太鼓に導かれるようにして行った先で出会った寄席わらし。誰にも構ってもらえない寄席わらしが悪さを働くので、わらしが見える特技?を持つ僕がおせわがかりとして寄席に住みつきます。落語家の弟子にもなり「晴坊」という名を頂戴します。この名前がまさにうってつけで、わらしの「フクちゃん」と接する晴坊の優しさがほっこりの2乗となって沁み渡ります。いたずらをするフクちゃん、甘えるフクちゃんを自然に受け止める晴坊。もう最高です。寄席での人々も優しくて和みます。2019/11/17
kei302
36
寄席わらし(座敷わらしの寄席版)の晩ご飯担当になった落語家未満の萬福亭晴坊とフクちゃんの話。名取佐和子さんが落語好きとは! 落語のネタとフクちゃんのご飯の話が絶妙に絡み合った人情もの。名前を与えられ、どんな者にも居場所があるって教えてくれる。それが落語。停電の夜のカレーのラストに心が温かくなる。2019/09/30
ユメ
33
“僕”はひょんなことから落語家に弟子入りし、「寄席わらし」フクちゃんのごはん係を務めることになる。同じものを食べて、同じ噺を聞いて。美味しいごはんも、落語も、数多の壁を越えてゆく。登場人物が置かれた環境に馴染みがなくとも、彼らの価値観が今の時代にそぐわなくとも、すっと入りこんで笑ったり泣いたりできるのが噺のよさだと思う。「寄席わらし」とは何者なのかを追求するくだりでは、またフクちゃんが独りになってしまうのではないかと危惧したが、「笑門来福」という寄席にぴったりなオチが待っていた。おあとがよろしいようで。2019/08/10