出版社内容情報
だから死に神は、こんなにも哀しい――
鎌倉には死に神がいる。命を奪い、それを他人に施すことができる死に神が。「私は死んでもいいんです。だから私の寿命を母に与えて」命を賭してでも叶えたい悲痛な願いに寄り添うことを選んだ、哀しい死に神の物語
内容説明
売れない小説家・柚琉が働く『おやつ処みなと』には「死に神」がいる。絶品アイスの作り手なのに極度の辛党の犀川さんだ。母が死んだ日に現れた犀川さんを死に神と呼んだのは、今は亡き祖父だった。あれ以来、死に神を訪ねて“お客”がやってくるようになった。自分の命と引き替えに母を助けたいとすがる女子高生。生き別れになった子どもと死ぬ前に一度でも会いたいと祈る父。人知れず代償を払い、彼ら“お客”の願いを叶える死に神。これは、鎌倉のおやつ処を舞台につないでいく、孤独な死に神の優しい物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スズ
61
他者の寿命を削って別の人の寿命を延ばす能力を持つ廃業寸前の作家柚琉と、代々柚琉の一族を見守ってきた『死神』でおやつ処の強面アイス職人の犀川、おやつ処の看板娘でお菓子作りが大好きな和花が切り盛りする甘味処が舞台の甘くて少し不思議な命の物語。人によって異なる寿命を削る事に過去のトラウマから強い抵抗感を感じる柚琉ですが、母の命を延ばして欲しいと泣きながら懇願する女子高生の少女に命を操る意味を説く姿が印象的でした。気配ゼロの犀川さんの唐突な登場にはビックリしましたが、洋梨&巨峰とアイスのパフェは一度食べてみたい。2018/09/08
hirune
54
図々しくて傍若無人な2人の友人にちょっとイライラムカムカさせられましたが、重たい秘密を抱えて作家としての仕事も上手くいかず物凄く後ろ向きに生きてる主人公のための『天の岩戸』作戦だったんですね。でもやっぱりウザいよ、あの人たち(^-^;不思議な力を受け継いでしまったため死に神の監視を受ける柚流ですが、監視というより抱えきれない力に押しつぶされないよう補助してくれる優しい死に神でした、犀川さん。見た目超絶怖いですけどね☆2016/11/17
真理そら
53
賞を獲って一気に有名になって以降スランプ続きの作家柚流は妹と着流しのアイスクリーム職人(死神)のおやつ処を手伝ったり食事を作ったりしている。とはいえ引きこもっているわけでもないのに高校時代のテニス部仲間の2人がいきなり訪問してご飯を食べたり勝手に柚流の行動予定を画策したりする。この図々しい友人二人の存在感が強すぎて死に神のキャラや柚流の屈託という本筋(ですよね)が影薄になったのが惜しまれる。深町は柚流を好きみたいだけど…誰にも言えない秘密を抱えた柚流の相手はまあ無理でしょう。2023/08/14
佐島楓
51
見た目が「怖可愛い」犀川さんと、不思議な力を持った主人公。そしてその妹。ライトノベルと思えないほど扱っている題材は重い。このきょうだいの着地点を見届けたい。2016/04/08
はつばあば
49
挿し絵と言うのは内容を把握しておかねば陳腐・・とも言われかねない主人公達。まぁ近頃は若見えする人が増えたからそうとは言い切れないかもしれませんが。柚琉さんは死神なんですか?。人の命をちょっとだけ操作できるのなら私もお願いしたいものです。海街diaryと同じく鎌倉におやつ処ができたらしい。そこにはちょっとだけ人生に行き詰っている青年とその妹、お手伝いをしてくれる犀の河原と同じ意味をもつのじゃないかと私が思う犀川さんに、高校時代の友人二人。人生というものはままならないから、助けてくれる家族がいて友がいるのです2019/09/02