内容説明
芸術に生き、つよい絆でむすばれた兄と弟、いせひでこが魂をこめて描くゴッホとテオのものがたり。小学校高学年から。
著者等紹介
いせひでこ[イセヒデコ]
伊勢英子。1949年に札幌市で生まれ、13歳まで北海道で育つ。東京芸術大学卒業。童話『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞、宮沢賢治作品『水仙月の四日』で産経児童出版文化賞美術賞、創作絵本『ルリユールおじさん』で講談社出版文化賞絵本賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やま
182
胸が裂けるような叫びが伝わって来ます。にいさん 2008.03発行。字の大きさは…大。画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホと弟の画商テオドルスについて描いた絵本です。この絵本は、弟テオが兄ヴィンセントを回想したものです。兄の葬儀、そして小さかった二人、麦畑で遊んだ思いなどを綴り、兄が画商に勤め、また、いろんな勤めに就くが、誠実に生きようとすればするほど、節度のない過剰な人間とみなされて居場所を失って行った兄の生きづらさと、白い画布以外に自分らしく生きられる場所がないという痛切な叫びが伝わって来ます。🌿続く→2021/01/31
いつでも母さん
173
マハさんの『たゆたえども沈まず』を読んだ後に読友さんに教えてもらった。絵も文もこれはこれで切ない。「にいさん」「にいさん」ぼくだけのにいさんー兄も弟も優しくそっと触れなければ、近寄るその気配だけで粉々に散ってしまいそうな繊細さは何と表せばいいのだろう。ゴッホと言えば黄色の向日葵と黄色の自画像を思い浮かべるが、この青の世界観も苦しいほどに研ぎ澄まされて私は好きだ。2017/11/26
kanegon69@凍結中
142
こ、この絵本はすごい!今まで見てきた、いせひでこさんの絵のタッチとはかなり違う印象です。一枚一枚の絵の圧倒的な迫力!絵の力、ダイナミズムを感じます。物語が、有名なフィンセントとテオのゴッホ兄弟の話だからでしょうか。フィンセントの世の中からなかなか認められない苦悩、にいさんを思うがゆえに寂しく、苦しく、そしてずっとあこがれ続けるテオの想い、そういった心の声をまさしく、いせさん流に絵本に表現した傑作だと思います。フィンセントとテオの心象風景を見事に圧倒的な絵と詩のような文章で綴った傑作です。ゴッホファン必見!2019/10/20
ちょろこ
137
想いの弔い、の一冊。いきなり心を奪われた。なんて繊細で、なんて輝かしくて、なんて愛に満ち溢れた作品なんだろう。目に飛び込む豊かな色彩が、弔いの色が、文字が、絶え間なく心を掴んで揺さぶってくる。幼少期の春夏秋冬、かけがえのない時間。二人が見つめるその風景。ゴッホがその風景で特別なものをみつめる傍らでテオはゴッホをきらきらした瞳で見つめていたんだね。これはまぎれもなくテオが捧げるゴッホへのありったけの想い。その想いを天へと放ち静かに弔ったんだね。鮮やかな向日葵が哀しみと共に目に焼き付くテオとゴッホの物語。2021/07/30
masa@レビューお休み中
129
これは、夢の光景だろうか。それとも、過去の記憶だろうか…。にいさんは、画家であるゴッホのこと。兄であるゴッホと弟のテオの軌跡を描いた絵本です。絵はもしかしたらすべて油絵で描かれたものかもしれませんね。絵のタッチとか、ひまわりがある光景なんかを見ていると、単に史実に基づく歴史絵本というよりかは、ゴッホに向けたオマージュ作品なのかなと思ってしまいます。画家として頑張る兄を応援するべく資金を援助し、絵を売るべく画商にもなるが、兄の絵を売ることが叶わないまま生涯を終えるテオ…。やはり、切なすぎて胸が苦しくなる。2013/07/30