出版社内容情報
アイヌゆえの差別に苦しんだマサとユタカは,運命にもてあそばれながらも自己を見い出し,ぎゃくに運命をあやつる力を身につける。 中学生から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
39
完結。久しぶりに小説の面白さを満喫。1957年作。当時映画化(成瀬己喜男!)&ドラマ化され社会的ブームになった。アイヌは300人しか生き残っておらず絶滅の運命にある民族だとか、話の筋に都合が良すぎるなど古さも感じさせられるが、北海道そしてアイヌの自然描写と、中学生たちや教師たちの純粋なヒューマニズムは、すがすがしい。忘れられつつある作品のようだが、児童文学の古典として読み継がれてほしいと思う。アイヌ人も和人も、時代は巡って今だからこそ、本書のような自然と共に生きる生き方が可能となり最前線なのかもしれない。2015/05/15
ちょん
19
読み終わってしまった。本当にいいお話でした。何か問題が解決した訳では無いのだけど、それに向かって諦めない、めげない主人公たちが本当に愛おしい。北海道という大地で前を向いて進んでいく子供たちの姿に励まされました。そして卒業という言葉にジーン。卒業したらもう会えないってことが昔は分からなかったんだよなぁと。2021/05/23
林芳
0
アイヌの姉弟の1年を描いた作品。戦後、民主主義が布かれたが、2流国民として蔑まれ、本人たちも自分たちの立ち位置はどこにあるのかと苦悩する。一方、共に生きる和人たちも偏見を持つ者、本音と建前の違いに気づき苦悩する者、目の前の姉弟をただそのままに受け入れ愛情を注ぐ者と、様々な人たちが登場する。そして、姉弟を通して、皆が成長する。どのような違いがあろうとも、「生きるこころがけがよければ、それでいいのではないか。」と。長い物語も、全てはここに集約する。2022/08/17
菱沼
0
再読。松浦武四郎のことを最近知り、読み返したこの本に彼の紀行文が引用されていて驚いた。『コタンの口笛』で石森延男を知り、『桐の花・グスベリ』『バンのみやげ話』など、中学・高校の頃に文庫で買って愛読した。今実家にあるそれらの本も読み返したいと思う。最初に『コタンの口笛』を読んだのは、ハードカバーの古い版だった。神に捧げる削り花や文様など、縄文文化に通じるアイヌの伝統に改めて興味を持った。2021/08/23