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出版社内容情報
1922年に新潟で生まれた完司少年は、外国へのあこがれから満州で働くことを選びます。しかし、楽しかった満州でのくらしは、召集令状によって終わりをつげました。釜山から出発し、戦地であるグアムへ行くことになったのです。到着直後の攻撃で左足を失ったあと、米軍の上陸により、完司さんはジャングルの中でひとり生きていかなければなりませんでした。
食料をなんとかして手に入れ、切りっぱなしの足を川や海で洗い、這いずるようにして移動する生活がはじまりました。持ち前のポジティブさと聡明さを生かし、ジャングルの中で生き抜いていく姿は、まるで冒険記のようです。
そんなサバイバル生活やその後の捕虜生活のことを、楽しかったこともあったと、ひょうひょうと語る完司さん。でも、戦争に行って帰ってくるまでの時間は自分にとって「この世にない時代」だったといい、最後にふと、こうもらします。
「戦争は、あの若い、いちばんいい時期を奪ってしまったのですよ。今ほしいものがあるとしたら、若さです。あの体力と機敏さがあったら、あれもこれもするのに、と思いますよ。」
好むと好まざるとにかかわらず、不条理にみながまきこまれる。そんな戦争の時代を生き抜いた、ひとりの青年のお話です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モモ
49
新潟から世界を見たいと満州へ向かった完司さん。楽しい満州での暮らしは一通の入隊命令書で終わる。日本が勝っているという偽りの情報しかないなか、機銃掃射で片足を失う。それからの完司さんが強い。食糧不足が激しく、3人で出かけた兵隊が2人で戻り、豚肉が手に入ったと言う怖さのなか、ヘタすると食べられるかもしれないと一人でジャングルに潜むことにする。戦後、アメリカ軍の捕虜になり怪我の治療のためアメリカに渡り、きみらは英雄だと手厚く治療されたエピソードが興味深い。戦争はダメだという完司さんのメッセージが伝わる良書。2021/03/06
マツユキ
12
作者がコケの絵本を作っている際に出会った完司さんの戦争体験。 完司さんは、世界を見たいと、満州に渡り、失敗にながらも、仕事を手に入れました。そんな時、入隊命令が来て、グアムへ…。 世界には見るべきものが、たくさんある。戦争は、それを台無しにするばかり。弱音を吐かない完司さんの悔しさ。漫画も交えてあり、戦争ノンフィクションですが、完司さんの人柄か、独特な味わいのある作品でした。2021/01/07
エル
5
ゆるっとした語り口長にだまされそうになるが、話しているのは戦争のこと。片足を失いグアム島で這って生き延びた完司さん。壮絶な体験だっただろうに辛いとか悲しいとかネガティブな言葉が出てこない。若さを戦争で失い、片足を失い、生命をおびやかされた。グアム島には至るところに死体が転がっていた。戦争を始めた人と現地へ行く人は別。やはり戦争はしてはいけない。人生もなにもかも失うのは戦争をやれ、と決めた人ではなく下っ端なのだから。2022/06/29
suchmo
5
こういうアプローチの戦争の本があって良いと思う!!ただ子供はどう感じるのかが気になる。完司さんがあまり語らない(思い出したくない)悲惨さや壮絶な様を想像できるかな?2020/12/12
ki-ki
4
★★★★☆2021/04/19