出版社内容情報
2019年7月、京都市伏見区にある「京都アニメーション・第1スタジオ」で起きた放火殺人事件。死傷者68人を出した凄惨な事件はなぜ起きたのか。裁判での証言や供述調書および独自取材を通して、青葉真司被告が起こした事件の実相に迫る。
内容説明
36人もの命を奪った戦後最悪の事件は、なぜ起きたのか。「京都アニメーション・第1スタジオ」で起きた放火殺人事件から4年半ほどが経った2024年1月25日、青葉真司被告に死刑判決が言い渡された。143日間(23回)に及んだ裁判は事件の何を明らかにし、遺族や負傷者は何を思ったのか。裁判の記録と独自取材を通して、凄惨な事件の実相に迫る。
目次
第1部 事件に至る経緯(青葉被告の生い立ちから;事件は止められなかったのか)
第2部 証言の記録(青葉被告は何を語ったのか;青葉被告の治療にあたった上田医師の思い;公判で語られた遺族や負傷者の思い)
第3部 社会に突き付けられた課題(同じような事件を繰り返さないために)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
140
京アニ事件とは結局、拡大自殺の一例だろう。思い通りにならない人生に絶望した者が、他人の命を奪うという究極の権力を振るった果てに殺されるか死刑になるのを望むに至る。自分の不運は社会に責任があり、報復する権利があると思い込むのだ。池田小事件や北新地ビル放火、アメリカでよく起こる銃乱射事件も当てはまる。この手の犯人は絶対に誤りを認めず、他罰主義的な主張を貫く。青葉被告の苛酷な半生に同情の余地はあるが、巻き込まれた人や遺族には悪夢でしかない。似た事件が相次ぐ中国は予防検束で対処しているが、日本はどうすべきなのか。2024/12/08
yutaka
81
たまたま娘が京都に住んでいた時期の事件で、そうじゃなくても犠牲者の多さで忘れることができない事件。遺族の声はもちろんだが、重度の熱傷を負った方の証言はひどく痛ましい。青葉被告の育成暦、貧困、認知のゆがみ、疾病など慮るべき点もあるかもしれないが、やはり判決は妥当と感じている。この本を読んでいるさなか、青葉被告が控訴を取り下げ、死刑が確定すると報道された。当初は見受けられなかった、真の反省が彼の中に今生じているのか…。2025/01/28
nonpono
62
控訴取り下げのニュースから。京アニへ盗作されといるという妄想から始まる事件。戦後最大の被害者、36人が犠牲、32人が負傷。秋葉原の事件の影響。就職氷河期世代の犯行というくくり。被告がわたしより2歳年下の78年生まれなんて知らず。周りに誰もいないから加速する妄想。だけど精神病と診断され服薬もしている。生活保護を受け訪問看護を受ける。福祉の難しさや限界を感じますね。そして無敵の人になり暴走する。秋葉原の加藤元死刑囚の友人の「事件を起こす前に、誰かの顔が思い浮かべば、思いとどまるかもしれません。」が、響いた。2025/02/10
ぽてち
36
36人が死亡し、32人に重軽傷を負わせ、自身も重度の火傷を負った「京アニ放火殺人事件」の犯人・青葉真二。本書は、彼の生い立ちから事件を起こすまでをたどり、どのような人生を送ってきたのかを浮き彫りにする。朝日新聞デジタルに連載された記事をまとめ、加筆されたものらしい。まあ、新聞記事(厳密には違うが)に+αがあるくらいで、特に目新しい内容ではなかった。彼が“パクられた”と主張する小説の内容とか、瀕死の状態から生還できた理由、それにかかった医療費は?という素朴な“知りたい”には何も答えてくれなかった。2024/11/19
読書は人生を明るく照らす灯り
20
多くの人に読んで欲しい作品。学校の授業や職場では、家庭内、さまざまな場所で多くの方に届いて、考えて欲しい作品2025/05/15