出版社内容情報
「クールジャパン」「観光立国」を始めとする国家的文化政策を筆頭に、書籍・雑誌・ムックからテレビ・ラジオ番組、人材育成セミナーなど、さまざまな媒体を介して社会的に広がっていった「日本スゴイ」コンテンツは、どんな機能をはたしているのか――具体的なエピソードの中から読み解く。
内容説明
「日本スゴイ」イデオロギーと、「日本人らしさ」物語の謎を読み解く。現代の「日本スゴイ」コンテンツは、どんな機能をはたしているのか。そして、どのあたりが人びとをキモチよくさせるのか。経産省「クールジャパン」、テレビ番組、道徳教科書…様々な媒体を通して、社会的に広がり流布していった「日本スゴイ」コンテンツの仕組みや泣かせどころを、具体的なエピソードの中から考察する。
目次
第一章 しぶとく生き延びる「日本スゴイ」
第二章 「日本スゴイ」テレビ番組のしくみ
第三章 「クールジャパン」で再定義される「日本人」
第四章 道徳教科書に入り込む「日本スゴイ」
第五章 「日本人」のつくりかた
第六章 「日本というお母さん」伝説
第七章 「教育勅語」を愛する人びと
著者等紹介
早川タダノリ[ハヤカワタダノリ]
1974年生まれ。編集業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
14
今時の「日本スゴイ」の諸相あれこれ。日本スゴイ系番組に世界的にもうまく対処できたことになっているらしいコロナ対応の「日本モデル」、戦時中に日本が東南アジア諸国を欧米列強の手から解放したという言説等々、我々はどうして「日本スゴイ」話を素直に受け入れて感動してしまうのかと考えさせられる。中学の道徳教科書にラノベ風の読み物があるというのには(笑ってる場合でもないが)笑ってしまう。2025/06/14
Melody_Nelson
6
東日本大震災の後から、この「日本スゴイ」系が増えてきたのかと思っていたが、テレビ番組は殆ど見たことがない。敢えて外国人を使って大袈裟に「日本スゴイ」と強調することで、見ている人は、日本に生まれて良かったな!と思うのだろうか。本書の後半は、時代錯誤な主義主張に関する疑問で、中でも「日本というお母さん」伝説は初めて知ったのだが、恐ろしくなった(少々くどかったけど)。2025/07/08
えだまめ
5
一時期から日本礼賛TV番組は増えたよね。という興味があり手に取った。想像していた理由は、衰退していく国の姿に対するアンチの様な感情処理や、老人ウケ特化コンテンツだと思っていた。本著は安倍政権などに強く見られた官製ナショナリズムの高揚を意図した側面があったものと指摘している。本著はその話題にとどまらず、太平洋戦争史観などの歴史認識やイデオロギーにも踏み込む。良く色々な文献にあたっているな。という印象。2025/06/28
まどの一哉
3
リアルな海外情報は一顧だにせず、ひたすら自分で自分を褒めまくる当時の「日本スゴイ」番組にはウンザリしたものだが、たしかにこれもいよいよ落ちぶれ出した日本社会の精神病理的な現れ。外国人が驚くシャワートイレを日本人の誇りとする、戦前からの全体主義的な伝統がある。2025/06/30
manabukimoto
2
日本って特別なんだね、と言いたくなる界隈で語られる物語たち。 「クールジャパン」「日本スゴイ系テレビ」「安倍・菅政権における道徳教育」などに現れる、無根拠で強引な、日本を特別視する思想と、日本こそ特別だと思いたい人たち。 第5章「『日本人』の作り方」家族を基本単位に作られる、同質集団としての「日本人」。そのまとまりを損ねる夫婦別姓は反対。 この「スゴイ」界隈の多くが、「日本ファースト」「排外主義」に繋がるのは自然な流れ。 社会学や歴史学を辿ると、たちまち破綻するスゴイ日本。美しい物語に縋る人々の哀れさよ。2025/07/19
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