出版社内容情報
日清・日露戦争は日本の負け。太平洋戦争では勝った!常識や定説をひっくり返し、山縣有朋からプーチンまでの近現代史の本質に重層的に迫る。歴史家・保阪正康からの真摯な問題提起。「核戦争の時代」に最も求められる、待望の一冊。著者はこう記す。「歴史とは『現在の影絵』である」。――現在の私たちにも反映している史実に対して、誠実に向きあわなければならない。しかし、「史実に貼られているレッテルを容易に信じてはいけない」。レッテル、つまりは常識や定説の裏側を見きわめることが重要だと述べる。そのための「発想の転換」が必要だという。発想を転換すれば、戦争の「勝ち負け」も全く異なる様相となる。「戦争は国家が目的を掲げて行うものだ。その目的を達成していない戦争は、戦闘には勝ったが戦争には負けたとなる。また、たとえ目的を達成したとしても、半永久的に恨みが残ったり、復讐されたりする。それも勝ったとは言えない」結局、「戦争は敗者の選択」だと強調する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
99
保阪さんによる近代日本がかかわってきた戦争への逆説的な意味づけであると思いました。最初にはロシア・ウクライナ間の戦争について書かれていて勝者なしの戦争であるということが言われています。第二次世界大戦で負けていなければ、日本の近代化あるいは民主化はかなり遅れていたという気がします。若干売らんかなという題名の付け方が気になりますが、日本の現状肯定ということなのでしょう。2024/07/18
Isamash
19
保阪正康著2023年発行書籍。多くの戦争から得た欧米の知識体系を学ばず、日本は日清・日露戦争、第一次大戦、日中戦争、太平洋戦争を行ったとの著者の主張には同意せざるを得ない。そして、戦争の歴史を継承する姿勢は日本は甘いとの主張もその通りで、それどころか痛い過去は無いことにしようとする様な権力者が多いのには怒りを覚える。まあそもそも歴史や経済学等社会科学が役に立たないかの日本の風潮は、理系人間ながら、何とも頂けない。イデオロギーに乗っかるのでは無く、徹底的に説明することに意義があるとの保坂氏のスタンスを支持。2024/04/23
金吾
18
書いている内容はなかなか面白いです。特に著者の磨きがかかってきている我田引水、牽強附会振りは楽しめます。2024/07/03
ごいんきょ
14
目から鱗の説でした。2023/12/31
GO-FEET
5
《近代日本の軍事の基本的な問題点は、ここまで述べてきた「戦争の現実」を第一次世界大戦から何も学ばなかったことだ。当時の日本が学ぶべき、あるいは学び得た戦争の現実は主に二つあった。 一つは戦争が国家総力戦になったこと。もう一つは戦争の残酷化を止める国際ルールができたこと。 日本はそれをほとんど無視し、国家総力戦を国民の生命と財産を守るための行為ではなく、「国民の生命と財産をつぎ込むのが国家総力戦だ」と解釈するようになる。 (中略)結果として特攻や玉砕の形で出てきてしまう。》(131-132頁) 2023/09/25