出版社内容情報
雇用条件の悪化、格差、国債累積……、現代の日本が抱える深刻な問題の根源は、すべて「人々が消費をしないこと」にある。株価や地価が高騰する一方で、なぜ私たちは豊かになれないのか。停滞のすべての謎を解き明かす決定的処方箋。
内容説明
「物」への欲望を失ったこの国の未来―株価や地価は高騰し、景気はよく見えるのに、なぜかGDPも賃金も増えない。さらには格差、年金問題、国債累積…。実は、こうした深刻な日本の実態はすべて「リアルな物よりもバーチャルなお金こそ愛おしい」という人々の欲望が引き起こしていた。「経済学の常識」が通用しない成熟社会で、データと徹底した論理で示すこの国の処方箋。
目次
序 ギリシャ神話・ミダス王の教訓
第1章 がんばっても豊かになれない本当の理由
第2章 「物よりお金」が経済を狂わす
第3章 資本主義の限界を乗り越えるには
第4章 金融緩和が作り出す虚構の世界
第5章 増税と囚人のジレンマ
第6章 善き社会を作る財政の使い道
第7章 グローバリズム経済を生き抜くには
著者等紹介
小野善康[オノヨシヤス]
1951年、東京都生まれ。経済学者。大阪大学特任教授・名誉教授。73年東京工業大学工学部卒、79年東京大学大学院修了・経済学博士。大阪大学社会経済研究所教授、東京工業大学大学院社会理工学研究科教授、内閣府参与、内閣府経済社会総合研究所長などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
36
新聞連載をまとめたものだが、かなり重複する説明があるうえ、章のたてかたがあまり良くない。編集者の典型的な力不足の新書。加筆するとか、わかりやすい章たてにするとか工夫が必要ですね。内容は換言すれば、いまの日本経済の低迷はすべて需要不足によるもの。だから、いくら金融緩和をしてもGDPが伸びない。なぜ需要不足かというと、国民が物やサービスにお金を使わず、ひたすらカネに執着しているから。興味深いのは、長期的な需要不足に陥った社会は能力が同じ人間でも大きな所得格差が生まれて、社会的な不安と不満を生み出すという推論。2017/11/15
Kentaro
34
戦後日本人は、豊かさを求めて働き続けた。雇用も増え、所得も上がり、それを元手に憧れの商品を購入し、更に欲しいものを手に入れるために働いた。一方で日本の貯蓄額は世界の5本の指に入り、金融資産の保有額が増加し続けている。今の日本でこれらの金融資産は、老後の不安のために貯蓄され、人々は蓄財に走る。かつてのような経済の高循環を実現するためには、お金を使って消費することが必要なのに、その手を打たないどころか、老後の不安を煽り、若年層から消費税の形で集めたお金を高齢者に配分するという政策が続いていることに問題がある。2019/06/27
もりやまたけよし
25
ケチケチの風潮は何処かで一掃しないといけないと言うことですか。お金を溜め込んで何にも使わないのが良くないんですね。2023/03/09
Francis
22
日本の優れたケインズ派経済学者(左派に区分される)小野善康先生の最新著。朝日新聞大阪版「ミダス王の冒険」に加筆したもの。なぜ金融緩和政策のアベノミクスがうまくいかないのか、それは日本人はもう欲しいものは全て手に入れており、今更お金が配られてもモノの消費には回らないからアベノミクスはうまくいかない。ではどうすべきか、今の日本では不足している教育、介護などの社会サービスを充実させ、その費用として税金をきちんと国民に納得がいくように説明して徴収すべきであり、増税もすべきであると説く。小野先生の理論の集大成。2019/02/21
犬こ
21
金融政策を促してもかつての時代のように、経済はコントロール出来ない時代となり、要因はいろいろある中、日本においては、貯蓄を溜め込む傾向が強く世のお金が回らないのも大きな理由の一つ。国内に留まらず、海外数値の比較もあり、為になる一冊。再読して更に理解したいところです。2017/12/19