出版社内容情報
ウソとハッタリこそが、民主主義の本質である。稀代の思想家が現代日本の欺瞞を撃つ。私たちは何を捨て、何を守るべきか。
内容説明
ポピュリズムや戦前復古の嵐が吹いているという。民主主義と自由、平和があぶないという。しかし「守れ」と言っているだけでは、守れない。かりに民主主義や平和を大切に思うならばこそ、いま私たちに必要なことは、もういちど諸価値の根源を掘り下げ、一人ひとりが自分なりに考え抜くことではないだろうか。稀代の思想家が現代日本の欺瞞を撃つ!
目次
序章 日本の戦後はいつ終わるか
第1章 「よい民主主義」なんてない
第2章 憲法は反・民主主義的―不都合な真実
第3章 社会をよくするという罠―民主主義と哲学
第4章 「みんなのために」を疑う―「公共性」とはなにか
第5章 日本国憲法は「違憲」である―主権をめぐる考察
終章
著者等紹介
佐伯啓思[サエキケイシ]
1949年奈良県生まれ。東京大学経済学部卒、同大学院経済学研究科博士課程単位取得。滋賀大学経済学部教授などを経て、1993年に京都大学大学院人間・環境学研究科教授。現在は京都大学名誉教授・こころの未来研究センター特任教授。1985年『隠された思考』でサントリー学芸賞、1994年『「アメリカニズム」の終焉』で東畑記念賞、1997年『現代日本のリベラリズム』で読売論壇賞、2007年に第23回正論大賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やまやま
11
民主主義の硬直した議論やあまりに強い自己主張に対して「まじめさと遊び心」が交差した「会話」を置きたいという気持ちは理解できる。政治に会話がない、というのはそのとおりであるが、さて、会話を始める手法はどう考えるか。もしかすると、このような短い記事でもSNSに載せられる時代は、やっと会話の再開がなされているのかもしれない。一方、良識ある政治的決定はよく事態を理解している人でなければできないと、オークショットやシュミットを援用して、政治的決定を有識人の内輪で行う必要があることを説く。保守主義の所以とする。2021/02/18
Shun
6
普段から民主主義に対して抱えていた蟠(わだかま)りが筆者の明快な文章ですっかり解れ、すっきりした。 知ってるつもりで知らないことがいくつもあり、『共和主義』は全然理解してなかった。 民主主義は人間の魂を堕落させることも有る。結論を出せないときに多数決することは、換言すれば、「逃げ」でもある。 (筆者が用いた『天皇制』という用語は唯一残念な点。法令によって成立した”制度”ではなく、少なく見積もっても1,300年以上は続いてきた”慣習法”なのだから、『皇室』と言って欲しい。)2017/09/05
jun
5
著者の見解の当否はともかく、民主主義とは何かということを考えさせられる一冊だった。2020/10/04
nnnともろー
5
西洋政治思想の文脈の中で捉えるべき「民主主義」「憲法」などの近代的な価値観。民主主義を絶対視せず、考え続けるという態度そのものは丸山真男を引き継いでいる。2017/10/22
マウンテンゴリラ
5
著者の議論にはいつも納得がいくが、特に本書の内容に関しては、分かりやすさと共に、強い共感を覚えた。権力は腐敗する、という言葉は、決して独裁的権力にのみ当てはまるのではなく、民主主義における多数派の権力についても言えることではないだろうか。多数派による専制であるならば、少なくとも社会的合意が成り立っているから、独裁者の専制よりは、進んだ形態であるといえるだろうか。独裁制とは権力欲に取り憑かれた冷血人間による政治で、多数の合意に基づく民主主義の方に遥かに優れた政体といえるだろうか。→(2) 2017/07/27