出版社内容情報
【自然科学/医学薬学】妊婦の血液検査からダウン症などが99%の精度で見分けられる──。新しい技術の導入が進む「出生前診断」。検査を受けるか否か。結果をどう受けとめるか。晩産化も進む中、より確実な妊娠を願い、葛藤する女性たちの声と、産科医療の現場から課題を探る。
内容説明
70年代に始まり、次々に登場する胎児診断技術。黎明期から最先端事情まで、取材で浮かび上がる出生前診断の「全容」。晩産化が進み、産科医療も進歩するなかで、多くの女性たちが重い問いに対峙し、葛藤している。体験者の生の声、医療者の賛否両論に日本で唯一人の出産ジャーナリストが迫る。
目次
第1章 動き出した次世代の検査
第2章 女性たちの出生前診断体験
第3章 「羊水検査」で出生前診断は始まった―ある医師の語りを中心に
第4章 1990年代「母体血清マーカー検査」をめぐる混乱
第5章 超音波検査とグローバリゼーションの波
第6章 これからの出生前診断
著者等紹介
河合蘭[カワイラン]
妊娠・出産、不妊治療・新生児医療を取材してきた日本で唯一人の出産専門フリージャーナリスト。1959年東京生まれ。カメラマンとして活動した後、86年より出産関連の執筆活動を始める。国立大学法人東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院、日本赤十字社助産師学校非常勤講師。産む人と医療者をつなぐネットワーク「REBORN」共同設立者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フクミミ
14
不妊治療の末、授かった子供にも障害の可能性はある・・という事に無知な私は驚いた。 出生前診断で高確率で我が子に障害があると判った場合、私は中絶する人を責めたりは出来ない。高齢出産が増加傾向にある昨今、出生前診断はやがて普通のことになってくるのではないだろうか。妊娠から出産まで、多くの事に判断を下さなければならない女性は本当に大変だ。2017/03/06
鳩羽
12
障害を理由に中絶はできない(堕胎罪にあたる)けれど、実際に出生前診断の確定診断がつけば中絶する人が多く、それも適切なカウンセリングや支援の準備があることを知れば考え方は変わるかもしれないのにそれもなく、なおかつ「知らせる必要はない」といわれてきたのに驚いた。産む主体が何より蔑ろにされているのが衝撃的で、そういう状態であれば、子供を作るか作らないかというレベルの問いにまで、後退しなければならないのは当然だろうという気がした。2018/08/14
アセロラ
9
メリット、デメリットを理解せずに出生前診断を受けるのは危険です。診断がさらに普及することで、障害のある子を出産した母親や子ども本人が生きにくくなる危惧もあります。親から子に伝わる遺伝性疾患は1万3000種類も見つかっていて、誰でも遺伝性疾患の保因者だといえます。特別なことではありません。現時点で妊娠や出産に関係のない人も、生命倫理や色々な点から、勉強になると思います。新書とは思えないほど内容盛りだくさんで、時間をかけて読みました。2019/08/21
こぺたろう
8
出生前診断について、ネットばかりでなく、もう少し信頼できる情報を得たいと思って読了。大変ためになりました。以前、旧優生保護法に関する報道を見た時、酷い話だと思っていました。しかし。本書を通じて、中絶を規定する母子保護法の前身が旧優生保護法と知り、雷に撃たれた気持ちになりました。報道を見ていた時は、正直なところ自分の事として捉えていなかっただけかもしれません。色々と深く出生前診断について考えさせられました。私はどちらかと言うと、受けて欲しくないかなあ。2018/09/03
mawaji
7
知りたくない情報、知らないほうがよかった情報も詳らかにされてしまうテクノロジーの進歩の中で、NIPTまでいかなくても「高度な検査機器の使用が日常化した現代では、もはや産婦人科にかかること自体が出生前診断そのものになっていること」にそろそろ気づくべきであるという著者の言葉は特に印象深く思われました。遺伝学は知れば知るほど誰でも何らかの遺伝性疾患の保因者だとわかることになるので、われわれは「知る」ことへの覚悟をもってこのような精度の高い無侵襲性の非確定的検査への議論を重ね続けねばならないのだろうと思いました。2015/04/22