出版社内容情報
女子大生・涼子は飲食店のアルバイトや学校生活を謳歌していたが、病気のため人工肛門になり生活が一変する。その意識と身体の変容を執拗に描き、読者の内臓をも刺激する、衝撃のデビュー作。第7回林芙美子文学賞受賞作「塩の道」も併録。
内容説明
女子大生の涼子は病気のため人工肛門になったことで生活が一変する。その意識と身体の変容を執拗に描き読者の内臓をも刺激する、現役医師による衝撃のデビュー作。へき地医療で出会った村民の生と死を描いた第7回林芙美子文学賞受賞作「塩の道」も併録。
著者等紹介
朝比奈秋[アサヒナアキ]
1981年京都府生まれ。作家、医師。2021年、「塩の道」で第7回林芙美子文学賞を受賞。22年、同作を収録した『私の盲端』でデビュー。23年、『植物少女』で第36回三島由紀夫賞を受賞。同年、『あなたの燃える左手で』で第51回泉鏡花文学賞、第45回野間文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
166
2024年上半期の芥川賞を獲った『サンショウウオの四十九日』朝比奈秋のデビュー作が気になって、手に取った。医師でもある朝比奈は、青森県のへき地医療に携わった経験から「塩の道」を書いて、いきなり林芙美子文学賞を受賞。その作品が昔から読みたくて仕方なかった。が、標題作「私の盲端」が予想を上回る衝撃作で心ふるえた。オストメイト=人工肛門の女性が主人公。同病同士の繋がり、SNSチャットグループ、その名も「秘密の穴」での書き込みに本音が溢れていた。生きものの必然である、排泄への嫌悪感がなくなった。2025/02/10
夜長月🌙@読書会10周年
73
デビュー作「塩の道」に加えて表題作の「私の盲端」が収められています。大学生の涼子は科学館につながる道で大便をもらしてしまいます。それも「丸々一本」。朝比奈さんは医師であり医学的な小説を書きますが実に文学的です。医師の書く医学小説の範疇を大きく飛び抜けた作品に魅了されました。2024/10/20
rokoroko
27
介護の仕事しているとオストメイトの方もたくさんいる。「パウチは嫁に触らせないの息子が変えてくれる」という方認知症なのにパウチを勝手に開けてトイレがお祭り状態になる方。こんな風にじっくり観察したことはなかったけど特別浴槽で風呂に入れている間便が出て恥ずかしそうにしていたっけ。作品はとてもリアルであの匂いが鼻にきていたたまれなくなった。2025/06/04
たっきー
13
タイトル作と「塩の道」(第7回林芙美子文学賞受賞作)を収録。タイトル作は、人工肛門になった大学生・涼子が主人公。のっけから便やストーマの描写が出てきて、驚く。これほど人工肛門やストーマの描写がされている文学作品は読んたことがなかった。生々しい身体感覚が迫ってくる作品。解説の井上荒野氏の文章も好き。2024/11/06
Cana.t.kazu
9
辺境な地域の身体事情と医療の現実,そしてそこからの死を描写した現在の朝比奈さんにつながる原点の作品。 一方で『私の盲端』は,私には当然実感できませんが,現在の朝比奈作品の患者のリアルがきっと描かれているのだろうなという作品です。 実感がわかない分だけ少し不思議な作品にも読めました。2025/06/12