出版社内容情報
サバイブ、したのか? 俺ら。家族という〈戦場〉から。史也の中で鮮烈に残る映像は、父を殺そうと振り上げた斧だ──。痛みを伴う読書体験の先に、かけがえのない希望を見せてくれる、直木賞作家の真骨頂!《解説・早見和真》
内容説明
“うちら、立派に生き延びたんだよ。あの最低最悪な家から!”父からの暴力で抑圧された少年期の影に付き纏われながら生きていた史也は、自分と同じ匂いのする梓と出会い、初めて家族に向き合い始める。苦しみの先にある確かな希望に胸を打たれる傑作長編。
著者等紹介
窪美澄[クボミスミ]
1965年東京都生まれ。作家。2009年に「ミクマリ」で第8回女による女のためのR‐18文学賞大賞、11年に『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞、12年に『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞、19年に『トリニティ』で第36回織田作之助賞、22年に『夜に星を放つ』で第167回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
となりのトウシロウ
66
父親の暴力・虐待から逃れるために13歳で父に殺意を抱き殺そうとした史也。母に捨てられ保護施設で育った梓。幼少期に背負った心の大きな傷はトラウマになる。それでも周りの大人に助けられ人生を諦めずに生き抜いてきて本当に良かったと思う。もっとも身近な人に傷つけられた心は、心を通わす人に癒やされ、失った心の欠片を埋めていく。心の瘡蓋を剥がし過去に向き合った二人が過去と折り合いをつけて前を向く姿に心が震える。どんな絶望もやがて終わり、希望に変わると信じたい。2024/09/14
piro
38
「心臓で読む小説だ。」解説の冒頭に記されたこの一文がストンと腑に落ちる。かつて父親からの凄惨な家庭内暴力に苦しめられた史也。大人になってもその忌まわしい記憶から逃れることができない彼が出会った同じ匂いを纏う女性。彼らの苦しみは、まさに心臓に響く。そして常に危うさを感じさせながらも、ふたりの間に生まれた微かな希望もまた心臓の鼓動と共に膨らんでいく。ストーリーに唐突さを感じる場面もいくつかありましたが、そんな事はどうでも良い。サバイバーとなった彼らの姿に心からエールを送りたくなる作品でした。2025/04/16
しゅん
15
少年期犯した罪に苦しみながら生きる青年・史也と彼と同じ匂いのする梓が過去と向き合いながら希望を見つけていく物語。父親からの虐待がテーマで息子の骨を折る描写などショッキングなシーンもありながら登場人物の何気ない会話の軽さが妙にリアルでラストの展開も凄く良かった。最後にようやく掴んだ幸せを絶対手放して欲しくない。2024/08/01
キューカンバー
14
窪美澄は文体が好きです。何を読んでも楽しく読めます。この物語にも引き込まれて一気に読んでしまいました。2024/10/07
こばゆみ
14
とても映像が浮かびやすいお話だった。父親に虐待を受けて育った史也と、同じように家庭に恵まれなかった女性たちの物語。職場が高校だった時、家庭に居場所がない生徒たちの話し相手になっていたけれど、そういう子同士がすぐ仲良くなっていたのを思い出した。史也と女性たちのようにお互いの同じ匂いを感じるのだろうな。そういう子たちが希望を感じられるような終わり方で本当に良かった。2024/07/24