出版社内容情報
元同心のご隠居・森口慶次郎は、花ごもろでただ食いを働いた大吉のため仕事探しに奔走する「理屈」、寺で皺だらけの私娼に声をかけられ、仕舞屋に連れ込まれるが……「三姉妹」など短編8編収録。NHK時代劇にもなった傑作時代小説シリーズ!
内容説明
元同心のご隠居・森口慶次郎は、花ごろもでただ食いを働いた大吉のため一肌脱ぐが(「理屈」)、店を潰した新七は、鰻職人の道を諦められず酒に溺れる(「断崖絶壁」)、岡っ引の吉次は善人と評判の太田屋の過去を嗅ぎつけ、執拗に探る(「隠れ家」)など珠玉の8編。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
1938年東京生まれ。69年「ママは知らなかったのよ」で新潮新人賞を受賞しデビュー。89年『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花文学賞、93年『恋忘れ草』で直木賞、97年『江戸風狂伝』で女流文学賞、2005年『夜の明けるまで』で吉川英治文学賞を受賞。13年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
74
先日アンソロジーを読んで久しぶりに「慶次郎縁側日記」シリーズを読みたくなった。慶次郎が主役の作品ではあるが、章によって岡っ引きの目線であったりするのが面白い。表題の「やさしい男」などそのいい例で、江戸中の憎まれっ子と自分で言うほど人に冷たい岡っ引きの吉次。入水寸前の女を助け、仕事を紹介してやる。だが、手首を切り医者の元に。その医院で療養中の女性を殺そうとする。「ばかやろう」と叫ぶ吉次が何だかかわいい。市井で生きる人たちの裏表を悲喜こもごもに読ませる作品。新作は読めないが改めて刷新されるのは嬉しい。2024/10/09