出版社内容情報
作家夫婦は病と死に向き合い、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶に苦しみ、その後を生き抜く。大反響を呼んだ朝日新聞連載のエッセイ。文庫化に際し、夫の藤田さんが亡くなってから3年10カ月、現在の心境を加筆。解説は林真理子氏。
内容説明
「年をとったおまえを見たかった。見られないとわかると残念だな」作家夫婦に訪れた夫の病。二人は病と死に向き合い、どのように過ごしたのか。残された著者は過去の記憶の不意うちに苦しみ、その後を生き抜く。心の底から生きることを励ます喪失エッセイ。
目次
夫・藤田宜永の死に寄せて
梟が鳴く
百年も千年も
猫たち
音楽
哀しみがたまる場所
作家が二人
不思議なこと
夜の爪切り
光と化して
降り積もる記憶
最後の晩餐
猫のしっぽ
生命あるものたち
喪うということ
あの日のカップラーメン
金木犀
それぞれの哀しみ
Without You
先人たち〔ほか〕
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年東京都生まれ。作家。成蹊大学文学部卒。89年『妻の女友達』で日本推理作家協会賞、96年『恋』で直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
77
亡き夫との想い出を綴ったエッセイ。文庫化で読み返してみた。「おしどり夫婦」と言われるのが、二人とも嫌いだったそうだ。時折、夫婦喧嘩もされた由。作家夫婦ー言葉での論争は凄まじかった。「血管が切れそうなほどに腹がった」こともあったようです。言葉を操る作家同士の口論、立ち会ってみたかった。「喧嘩するほど仲が良い」とも言いますから…。最後の晩餐、テレビを見ていた夫が「ステーキを食べたい」と言う。食欲がなかった夫が…、奥さんが精魂込めて焼いた40gのステーキを完食したとのこと。息を引き取る三日前の朝だった。【合掌】2024/03/15
ぼっちゃん
55
夫で作家の藤田宜永さんを亡くされたことを中心に書かれた喪失エッセイ。作家同士だがお互いリスペクトされ、愛し合っておられたのがわかるエッセイで、本当に美しい文章のエッセイだった。2024/03/06
uuuccyan
26
小池真理子さんの、夫である藤田宣永さんが亡くなった後の深い喪失と哀しみのエッセイ。夫婦もどちらかが先に逝きどちらかが残される。残された寂しさを文章で表現するのはとても難しいと思うのだけど、さすが作家、美しく静謐な文章にものすごく心揺さぶられた。文章を書ける人が羨ましい。書くことで寂しさが紛らわせるわけではないが、きっと心の整理にはつながると思う。2024/04/11
shi-
15
小池さんの本好きでしたが、これを読んで小池さん自身のファンになりました。 ここに書かれていることが小池さんの本当の心の一部分だとは思うけど、自分の心の中、大事な人を失ってしまった喪失感、何て上手に、綺麗な文章で表現される方なんだろう?と改めて小池さんの凄さを知りました。 2024/03/05
オサム兄ぃ
12
直木賞作家同士のカップル。37年間連れ添った末、肺ガンで先だった夫を思う妻のエッセーは、身も心も引き裂けるような悲しみの言葉に満ちている。周囲から「もう泣かなくなったでしょ?」と声がでるほど時間がたっても、喪失感が埋まることはなく、何を見ても何をしても故人の記憶が呼び起こされる。この上なくウエットなのだが、読後の印象は不思議と静謐だ。高原の静かな森で文章が綴られ、自然や動物たちに視線が向くことが慰めになるためのかも知れないが、悲嘆するのも生の証であり、生きていく力を引き出すことがあるのではないか。2024/03/11