出版社内容情報
占いを信じていない占い師であり、違法カジノのディーラーでもある僕に舞い込んだ、ある組織からの指令。それは冷酷な資産家の顧問占い師となることだった──。国内外から新作を待望される著者が描き切った、理不尽を超えるための強き光。文庫版あとがきを加筆。
内容説明
主人公は占いを信じていない占い師で、違法賭博のディーラー。ある組織の依頼で、正体を隠し奇妙な資産家の顧問占い師となる。だがその資産家は、自分を騙す者を殺害するような男だった。交錯する様々な思惑。降りかかる理不尽の中、窮地の先に主人公を待っていたものとは―。
著者等紹介
中村文則[ナカムラフミノリ]
1977年愛知県生まれ。福島大学卒。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞し、デビュー。04年『遮光』で野間文芸新人賞、05年『土の中の子供』で芥川賞、10年『掏摸“スリ”』で大江健三郎賞受賞。『掏摸“スリ”』の英訳が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの2012年の年間ベスト10小説に選出される。14年、日本人で初めて米国でデイビッド・グディス賞を受賞。16年『私の消滅』でドゥマゴ文学賞を受賞。作品は世界各国で翻訳され、支持を集め続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
79
中村文則さんの作品は、とても体力を使う読書になります。でも、それが心地いい感じの疲労感を与えてくれます。スポーツをした後のような感覚です。爽快感は、個人差があるかもしれないけれど、一筋の光が射してくるようにも感じます。今年は年明けから不安な出来事が続き、嫌な気持ちになりました。この作品は決して明るい作品ではないのですが、読後感は、そうした不安感を払拭してくれたように感じます。中村さんご自身のあとがきも毎回楽しみです。2024/01/12
オーウェン
60
占いを信じないカードディーラーの僕が、資産家の佐藤の顧問占い師になることになった。 違法賭博当たり前なポーカーゲームに参加することになる僕を襲う運命。 カードの歴史だったり、ギリシャ神話や魔女狩りなどの歴史も織り交ぜつつ、ポーカーゲームに臨む試合。 遺書の段階で終わってもよかった気もするが、コロナ禍の現在を敢えて描くために第5部があるのだろう。 カードに縛られた未来よりも、明るい未来を。 中村さんには珍しいくらい明るい終わり方だけど、これもコロナがさせたのだろうか。2024/04/13
Tαkαo Sαito
29
2年前のハードカバーに続き文庫本でも我慢できず購入。やっぱり異次元の面白さ、最高傑作。 特に、違法賭博場での全てを賭けるテキサス・ホールデム形式ポーカーのシーンが痺れる、最高に面白い、マジで最高傑作。巻末の中村文則さんの解説?もとても良かった。相変わらず、暗さの中にある微かな希望、光を描くのがうますぎる。 僕たちはまだ絶望するのには早すぎるんだろう。だから可能な限り前を向いて生きていきたい。明日どうなるか誰にも分からないんだから!2023/09/30
さち@毎日に感謝♪
25
厚い本なので、読むのに時間がかかりました。占いを信じていない占い師が主人公でした。カードの裏に隠された心情や心理状態に圧倒されましたが、後半は色々な出来事が起こり、ちょっと盛りすぎじゃないかな…と思いました。2023/12/02
くろき
19
中村さんの本は何作か読みましたが、かなり読後がマイルドでした。「なんらかの理不尽さとそれに対抗する、もしくは一方的に虐げられてどうしようもない人」という設定で、作中の手記に見られるような短編のような綿密で丁寧なストーリーがふんだんに含まれていて面白かったです。新聞連載ということもあるのか、時事ネタを含み人智を凌駕する天災をその理不尽さの対象とする場面かま描かれ、急にきたなぁという印象を受けました。盛りだくさんで面白いけど、終盤まではかなり集中し楽しめたので、まとめ方が少し残念だ思いました。2024/01/01