出版社内容情報
国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。新時代の「スター」は誰だ。「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応――作品の質や価値は何をもって測られるのか。私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。ベストセラー『正欲』と共に作家生活10周年を飾った長編小説が待望の文庫化。
内容説明
新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した尚吾と紘。二人は大学卒業後、名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。受賞歴、再生回数、完成度、受け手の反応―プロとアマチュアの境界線なき今、世界を測る物差しを探る傑作長編。
著者等紹介
朝井リョウ[アサイリョウ]
1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年『何者』で直木賞、14年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞、21年『正欲』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいきち
55
学生時代、同じ方向を向いて一緒に映画を作った2人。卒業後、一方は映画監督の元に弟子入りし王道の道へ、一方は職には就かずにフラフラして持ち前の感性を活かしてYouTube動画製作をするようになる。映画監督とYouTuber、果たしてどちらが「スター」なのか?また、何をもって誰が作品を評価するのか?大事なのは作品の質なのか、それとも「バズる」ことなのか?うーん、新しい!どちらの視点もよく取材されていて読みごたえのある一冊でした。2023/05/18
カブ
52
伝えたいことは分かる気もするが、心のモヤモヤが残る本作。表現することを突き詰めていくとわからなくなってしまうのか。受け手としての自分の心持ちも変わっていくのか。今は世の中の変化のスピードに追いつけない。2023/04/08
torami
45
映像制作の世界を舞台に、現代で創作をすることの苦悩を描いた作品。まさに朝井さんの言うところの「時代の空気を瓶詰」にした小説。尚吾と紘。二人の経験と価値観が代わる代わる提示され、それに合わせて読者の思考の方向もめまぐるしく切り替わる。一方で浅沼や鐘ヶ江、泉といった周囲の人々がいかにも客観性が高そうな視点をポンと提示する。だけど誰の言う事が本当なのかは分からない。人によって世界の見え方そのものが違っていて、誰の意見も常に揺らいでいる。誰か一人の見方だけが時代を表しているわけではない。(続)2025/10/04
seba
45
自分の譲れない評価軸も、源泉を辿れば物心つかない頃に誰かに影響されて得たものだったりする。そこから様々な経験をして自分の中で育てられたものが自分の感性であり、大事にしたいと思う。しかし価値観の多様さがより顕在化した現代においては、自分のものとは全く異なる評価軸の存在を認識する場面が嫌というほどある。自他のそれは比べるものではないのに、無意識に比較してしまい不愉快になったりさえする。そんな中で自分の評価軸を時に疑い、止揚したりあるいは単純に再考してみることもまた、自分の感性を大事に磨くことの一環だと思えた。2023/07/07
葵@晴読雨読
35
ある映画賞で大学時代にグランプリを取ったクリエイター2人の卒業後のお話。一人は名監督の元に弟子入りし、一人はYouTuberへ。主軸は映像を扱っているけれど、映像関係やクリエイター関係でなくどんな仕事にもあてはまるような気がした。再読したい本。2023/04/16




