出版社内容情報
北原亞以子[キタハラアイコ]
著・文・その他
内容説明
元南町奉行所同心のご陰居・森口慶次郎は、自らを出刃疱丁で傷つけ大怪我を負った娘・おひでを引き取る。男に捨てられ、すさんだ生活を送っていたおひでは、飯炊きの佐七の優しさに心を開くようになるが(「おひで」)。人生の哀歓を描いた珠玉の短篇12編を収録。
著者等紹介
北原亞以子[キタハラアイコ]
1938年東京生まれ。69年「ママは知らなかったのよ」で新潮新人賞を受賞しデビュー。89年『深川澪通り木戸番小屋』で泉鏡花文学賞、93年『恋忘れ草』で直木賞、97年『江戸風狂伝』で女流文学賞、2005年『夜の明けるまで』で吉川英治文学賞を受賞。13年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山内正
5
傘問屋の主人と会う約束に 四十二で醜男、二朱より多く貰った事がない、十日後にと言う そう言えば鉄次の弟と飲みながら 男と会う日しつこく聞いてた 企んでるちきしょう殺してやる 二階に鉄次が女といた だらし無い真似をと言ったら殴られ倒れた 気が付いたのねと女が部屋に 寝たら治るって晃さん 定町廻りって?飯食っていけって 長屋で騒いだ後眠ったのか 医者が笑ってる 晃さんの親父? 余計なお世話さ 手を出し二朱でどう?と この娘手が掛かるぜと指を握る 2022/10/09
山内正
4
のんびりと雨宿りしていたら 慶次郎が傘も持たずに行くのを 亡くした娘の許嫁に跡を継がせた 足は根岸に向かってる 粗末に見える家に入った ここは山口屋の僚だよと後から 若い男が 俺も慶次郎の鼻をあかしてやろうと狙ってたと おたえさんだろう?政吉ってんだと 亭主は盗みで捕らえられ吟味中に死んだのさ人を騙すより騙されない様に生きてきたのさ 一緒に盗みに入らねぇかと誘った 今頃湯に入る刻だと垣根を超えた おたえも入り血で倒れた政吉が 助けてと叫んだ 母の為にこの簪預かってくれと お前がいつまで持ってちゃと2022/09/22
ko-sight
2
おひでが何もかも上手くいかず、捨て鉢になっているところを見守る佐七の優しさがなんともいえない。その他、不遇な女達をちょっとし下がって見守る慶次郎、晃之助が良い。 2023/03/02
山内正
0
素寒貧老いぼれのへちゃむくれ 佐七とおひでが言い合う声が スルメの足で酒を飲むおひで 台所てそっと飲む様になった 上り口で足をぶらつかすおひで 鼻緒くりい買ってやるさ 一緒に下谷へ 佐七の膝を大きく揺すり喜ぶ じゃ居酒屋へ連れとくれよ 旦那が怖いのかえ? もういいよどうせ男に捨てられ行き処のないから 大事にする気なんざ無いんだろ 一刻しても帰って来ないおひで 岡っ引きがおひでご刺されて医者へと 居酒屋にいたんだが若い男の出した包丁へ 自分から行ったって事で 来てくれたんだね 好きだよバカ親父 目を閉じて 2022/12/01
ハル
0
タイトルの「おひで」は切ない。 本当に人の心を描くのがうまい。 激しい感情が描かれる場面もあるが、作品全体に漂うのは穏やかで温かい雰囲気。 どうしようもない気持ち、やりきれなさ。 それを誰かが気づいてくれたらと思うときに、慶次郎の温かさに救われる。 ★42022/10/25