出版社内容情報
刹那にリアルを感じる美しい妹・杏と、規律正しく行動する聡明な姉の理有。容姿も性格も対照的な二人は、小説家の母に対しても、まったく異なる感情と記憶を持っていた。姉妹にしかわかりえない濃密な共感と狂おしいほどの反感が招く衝撃のラストとは? (解説:綿矢りさ)
内容説明
刹那にリアルを感じる美しい妹・杏と、規律正しく行動する聡明な姉の理有。容姿も性格も対照的な二人は、小説家の母に対しても、まったく異なる感情と記憶を持っていた。姉妹にしか分かりえない濃密な共感と狂おしいほどの反感が招く衝撃のラストとは?
著者等紹介
金原ひとみ[カネハラヒトミ]
1983年生まれ。2003年『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。04年、同作より芥川賞を受賞する。10年『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でドゥマゴ文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayu
61
相変わらずの激しさながら、この鋭利な文章に触れたくて読みたくなるのが金原さん。目に見える虐待じゃなくても、愛されたいのに望むものが返ってこない、そんな生活は苦しい。刹那的な生き方しかできない妹としっかり者に見える姉。だけど、姉も十分に損なわれている。同じ出来事を見ても、どの情報を選択し記憶に残すかはその人次第。母の死因ですら食い違う姉妹は近くにいながらも孤独だ。それでも、姉妹それぞれの形での強かさも持っている。人の記憶が曖昧なものなら、正しさよりその瞬間のプラスを見るのが幸せなのか、なんてことを考えた。2024/03/31
momi
43
ある姉妹の話…。正反対の二人がどちらとも母に心を囚われ…二人だけの秘密の記憶に苦しむ…。曖昧な記憶の真相は?!危ういバランス中で生きている姉妹がとても痛々しく落ち着かない気持ちにさせられる!一人っ子の私には理解しがたく…いや…姉妹がいてもこの二人を理解することはとても難しいのではないかと思ってしまった。2020/03/11
水色系
29
金原さんの本を読むと心抉られるが、どうしても手に取っちゃう。人間の割り切れなさが描かれた作品。私は、飲み会に行ったら必ず死にたくなる母の気持ちがいちばんわかる、っていうか、私だ。この種の人に、わかる~とか言ってもその生きづらさが1ミリも薄れないところが、言う言わないはともかく同居している親族とか大切な人にとっては傷つくよなと、申し訳ないような気持ちになった。2023/01/15
さち@毎日に感謝♪
23
容姿も性格も対照的な姉妹の話。読んでいてどっちが本当の世界で生きているのか分からなくなりました。でも2人とも本当の世界でなんて生きていないだろうなぁとも思いました。2020/05/03
桜もち 太郎
22
刹那的に生き激情型の妹の杏16歳と、規律正しく生きるしかない大学生の姉・理有。物語の始まりは仲の良い姉妹だが、その心の奥に隠された闇はとてつもなく深くなっていく。終盤はまるでホラーを読んでいるような感じ。二人の姉妹の間には母親の死因ですら共通の認識はなく、お互いの気持ちは全く理解できていない。「誰とも溶け合えない孤立感」、母親の血が全く違う性格の二人に受け継がれていたのだろうとしか思えない。小説だからどんな終わりかでも構わない。でも登場人物たちの今後が気になって仕方がない。2022/08/24