出版社内容情報
北町奉行所同心の夫を亡くした商家出のうめは、独り暮らしを楽しもうとしていた矢先、甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意するが……。笑って泣いて──人生の哀歓、夫婦の情愛、家族の絆を描いた宇江佐文学の最高傑作!
内容説明
北町奉行同心の夫を亡くしたうめは、堅苦しい武家の生活から抜け出して独り暮らしを始める。気ままな独身生活を楽しもうと考えていた矢先、甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意決意するが…。遺作にして最後の長篇時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
124
奥様、お母さま方も一度は思ったことが…。子育ても一段落してホッと一息。「独りで自由に暮らせたら…」と。今作は、良妻賢母の主人公うめが、武家の嫁として独り暮らしを始める話です。時にうめ48歳。夫の臨終でも(心で泣いて)涙を見せない気丈なうめ。そんな生き生きしたうめだが、或る時、夫のやさしい思い遣りの一端を知り夫を見直します。6年も子供ができなかったうめに対する親戚家族の風当たりから守っていてくれていたこと…を。孫たちからも慕われるうめ婆。人情に厚く、心が通った優しいうめ婆の奮闘記はサイコーです。2018/04/16
ふじさん
71
遺作にして最後の長編。夫の死をきっかっけに自由を求めて家を出て市井の暮らしをすることになったうめ婆の奮闘記。甥の鉄平の結婚の話や梅干し付けの話がいい。癌を患って闘病生活をする中で書かれた最後の作品、うめ婆の一言一言が作家のメッセージとして強く心に残った。人の真の幸せとは何だろう?今更ながら考えされられた。何度も読んでうめ婆の生き方と語る言葉に生きる力を貰いたい。 2020/10/16
優希
64
面白かったです。4人の子を結婚させ、夫が亡くなったことで一人暮らしを始めるうめさん。日常の様々なことがつまらないようで実は喜びなのだと気付かされました。江戸人情の暮らしやうめさんの考え方が身に染みます。一言一言が現在に向けたメッセージなのかもしれません。2021/02/26
しげ
62
朝日新聞連載で未完遺作となった本作、積読してから少々時間が掛かりましたが読み終えました。数ある宇江佐作品まだまだ読みきれていませんが病と戦いながら書かれた作品、「あとがき」で親交の有った諸田さんが触れていますが、亡くなられる半年程前(3月)まで執筆されていたと知れます。作中主人公のウメの呟きで「この先、生きていても…」のくだりはウメの言葉なのか宇江佐さんの言葉なのか考えさせられました。2025/02/15
kei302
45
宇江佐さんの未完の遺作。生きているうちは楽しく、死も悪いものではないと思う。でも、310ページの《未完》の字を見つけたときは悲しかったし寂しかった。本のタイトルの“行状”記。何となく宇江佐さんらしい、しかつめらしさとユーモアと諧謔精神を感じる。 2020/01/22