出版社内容情報
【文学/日本文学小説】小学4年生のさよは、母親と二人暮らし。ある日、図書館で出合った『七夜物語』というふしぎな本にみちびかれ、同級生の仄田くんと夜の世界へ迷いこんでゆく。七つの夜をくぐりぬける二人の冒険の行く先は? 解説・村田沙耶香。
内容説明
グリクレルの台所でさくらんぼのクラフティーを食べながら、忘れられない夜を過ごしたさよと仄田くん。やがて最後の夜を迎えたふたりは、夜の世界の住人たちを「ばらばら」に壊そうとする力と対決する。そして、七つの夜があけると―。
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958年東京都生まれ。作家。お茶の水女子大学理学部卒業。94年「神様」でパスカル短篇文学新人賞、96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『水声』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shizuka
66
冒険が終った。最後の闘いは辛かったと思う。よくがんばったね。人はみんな、そうやって成長していくんだ。その苦しさをきちんと糧にできている人、そうじゃない人でその後の人生は変わるけれど、さよと仄田くんなら大丈夫だと思う。名もなき小さなモノを守ろうとするのが子供。うん、そうだ。けれど大人も本来はそうでないといけない。優先順位やモノの価値、大人になれば見えてくることもあるけれど、子供の心は忘れたくないものだな。夜の世界から帰ってきて少しだけ変わった現実。いい方向に向かったよね。ふたりの奮闘は無駄じゃなかったね。2016/08/19
クプクプ
65
主人公のさよと灰田(ほのだ)君が夜の夢の世界で方位磁石に導かれて進んでいき、オニイトマキエイのマンタ・レイに会い、そのマンタ・レイが話すのが面白かったです。人間が年齢を重ねると時間の進み方が一定でなくなり半年先のことが明日になり、反対についさっきのことが遠い昔のことになるという表現は最近の私にも当てはまると感じました。また灰田君が短い鉛筆を大事にし、なぜ人間は余分なモノを大事にするのか、無駄なモノは捨ててしまえ、というのも不思議な表現で、いつものことながら川上弘美さんの物語の世界をたっぷりと堪能しました。2021/05/13
絹恵
49
"誰かを好きになるのに、能率なんか関係ないよ"たとえ忘れてしまっても、そして言いようのない懐かしさが込み上げてきて胸を苦しくさせても、涙をこぼして笑うことが出来たら、間違えてばかりの世界でそれは正解になるのだと思います。気が付けば夜が少しやさしくなっているように感じて、今日もあなたにそんなやさしさが降り積もるように、ごきげんよう愛おしい夜の世界。2015/05/24
佐島楓
44
読み終わって、少し泣きそうになってしまった。幼い誰もが、もしかするとこんな冒険をしていたかもしれないのだ。覚えている人は、どれだけいるのだろう? さよちゃんは、とても幸せな子だ。たとえ彼と、別の道を歩んだとしても。2015/06/27
エンリケ
38
二人の子供達の冒険が更に過酷になる下巻。彼らに突きつけられるのは内面の葛藤と肉体的苦痛。でも世界の歪みを正す為、二人は歯をくいしばって前に進む。読むに従ってシビアさを増すこの本。作者の提起するテーマは中々手強い。一貫して描かれる自分の心の弱い部分との相克。大人でも辛い様な事を夜の世界で体験する子供達は本当に可哀想。でも現実世界では弱々しい彼らの意外な勇敢さは大いに読者を勇気づけてくれる。長い物語の終わりは予想外の結末。彼らの勇気は世界をほんの少し変えられたのかな。多様である世界の大切さを再確認した一冊。2017/02/15